【5月11日 AFP】ポーランドで10日に予定されていた大統領選挙は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で引き起こされた政治危機により投票所が開かれず、投票者数がゼロという異例の事態となった。

 大統領選の実施をめぐり右派与党「法と正義(PiS)」政権と野党は合憲かつ感染予防の観点から安全な事態打開策を見いだせず、選挙は公式には延期も中止もされないままになっていた。

 10日夕、選挙委員会は有権者が「どの候補者にも投票できなかった」ため、新たな投票日を2週間以内に決定するよう議会議長に求める決議を採択した。投票は日程の公表から60日以内に実施する必要がある。

 野党「民主左翼連合(SLD)」のトマシュ・トレラ(Tomasz Trela)氏ら2人の議員は、通常なら投票所となる学校に手製の投票用紙を持って現れ、なぜ投票できないのかと疑問を投げかけた。

 トレラ氏は記者団に対し、「投票所が閉鎖されているということは、誰かが選挙を中止したということだ。しかし誰が何を根拠に中止したのか不透明だ」と述べた。

 ワルシャワを拠点に活動する政治学者、スタニスワフ・モツェク(Stanislaw Mocek)氏はAFPに「われわれはひどくばかげた政治的混乱の中にいる」と国民の間で広がる混乱や懸念を代弁し、「(政府は新型コロナウイルス流行を)自然災害と宣言し、大統領選を(憲法に従って)適法に延期すべきだった」と述べた。