【4月19日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が先週、新型コロナウイルス対応で中国に追従しているとして世界保健機関(WHO)を糾弾し、資金拠出を停止するよう政権に指示したと発表したが、中国は米国が手を引く場所で自国の国際的な地位を高めるという戦略を確立しつつある。

 アジアの大国となった中国が、世界各国との金銭的・軍事的関係を築くために膨大なリソースを投入する中、国連(UN)機関ではここ数年、多くの中国人がトップをはじめとするポジションを得てきた。

 中国の長期的・世界的な影響力戦略は、特にアフリカで顕著だ。アフリカ諸国の対中債務は10年前には最小限だったが、国連当局者によると、中国は習近平(Xi Jinping)国家主席が進める経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」を通じて投資を増やしているため、現在は1400億ドル(約15兆円)に上っている。

 中国はこうした事前準備によって、さまざまな問題や国際機関での決議においてアフリカの支持を獲得できるという強力な立場を手にしてきた。

 米国はエチオピア出身のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)氏が事務局長を務めるWHOについて、新型ウイルス流行初期に中国が主張していた人から人への感染はないという見解を無批判に受け入れたと非難している。さらに、WHOが流行の規模に関する中国の「透明性」を称賛していることも過ちだと批判している。

 欧州連合安全保障研究所(European Union Institute for Security Studies)のアジア部門上級アナリスト、アリス・エクマン(Alice Ekman)氏は、「過去10年以上にわたって、特に習近平氏が国家主席に就任した2012年以降、中国外交はグローバルな統治を再編しようという圧力を本気でかけてきた」とAFPに語った。「これは尊大な野心で、中国が論じているのはこの再編の『かじ取り』についてだ」

 米国が撤退する一方で、中国が間接的に影響力を強めるという同様の現象は、複数の国連機関で顕著にみられている。

 ますます増える平和維持活動(PKO)への部隊派遣を含め、中国は国連において、日本を抜いて米国に次ぐ2番目の財政貢献国となっている。

 ニューヨークの国連本部から指示される活動だけではない。国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)や国連食糧農業機関(FAO)、国際民間航空機関(ICAO)、国際原子力機関(IAEA)など多くの国連機関で、中国はその財政的影響力を駆使している。

 エクマン氏は、「ドナルド・トランプ氏が米大統領に選出されて以降、中国は多国間主義の保証人としての立場を強めた」と指摘。新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は中国政府にとって「全方位でグローバルな統治に投資する」も新たな好機だと述べた。

 エクマン氏によると、中国のアプローチは「実利的・国際的」な戦略で、WHOはそうした戦略における「多くの国際機関の一つにすぎない」という。 「長期的には、中国は国際統治におけるポスト欧米時代の到来を望んでおり、そこで中心的な役割を果たすつもりだ」 (c)AFP/Philippe Rater with AFP bureaus