【4月5日 東方新報】新型コロナウイルス肺炎のペットへの感染例が香港で確認されて以来、中国ではペットが遺棄されたり、殺害されたりする現象が起きている。ほとんどがペットの感染を疑う飼い主がパニックを起こしたための行動で、ペットを高層マンションから投げ捨てて殺してしまうケースもあった。医療機関や小動物保護センターは、犬も猫も人類の友達で、ペットから人への感染の証拠もないのにペットを捨てたり、殺したりしないようにと呼び掛けている。

 北京紙・新京報(The Beijing News)によれば、新型コロナウイルスがペットに感染しうるといううわさを聞き、急にペットが怖くなってくる飼い主が増えたため、あるペット愛好家ブログの主は、ペットの引き取り手を探してもらえないかという私信を多く受けるようになったと明かし、「北京、上海、広東(Guangdong)などのネット民が、私が捨てられたペットのために引き取り手を探す活動をしていることを知り、助けを求めてくる。何年も飼っていたペットを、いきなり連れてきて、置いて帰った人もいる」と語った。

 ペットが怖くなるのは飼い主だけではない。一部地域では飼い主の許可なく、ペットを捕獲、殺害する事件も起きている。江蘇省(Jiangsu)無錫市(Wuxi)では、アパートの住人が隔離観察措置を受けた際、その人物が飼っていた猫をその社区の作業員が生き埋めにしてしまった。感染が発覚して対象人物が隔離されたあと、社区としては消毒作業を行うが、その時に一匹の猫が発見され、地元民の強い要望により殺処分をせざるをえなかったという。

 浙江省(Zhejiang)杭州(Hangzhou)蕭山市(Xiaoshan)の新誼村(Xinyi)では、湖北省(Hubei)帰りの村民が預かっていた猫を、村民委員会が「無害化」処分すると決定した。その猫は友人から預かった猫で、村民はこの猫を本来の飼い主に返しに蕭山にやってきたのだが、猫は飼い主の手に戻ったとたん、村民委員会に連れていかれてしまった。

 こうした状況に対応するべく、各地の小動物保護センターでは、新型コロナウイルス肺炎ペット避難キャンプを開設するところもある。

 四川省(Sichuan)啓明小動物保護センターは、もともと遺棄されたペットを収容し、病気やケガを治療するための機関だが、新型コロナ肺炎が発生して以降は、新型コロナウイルス肺炎による遺棄ペットの受け入れを行っている。およそ20匹以上の新型コロナウイルス感染「疑い」のペットが収容されているが、ほとんどが感染しているか真相不明のまま持ち込まれている。

 収容されたペットたちは消毒や害虫駆除などの処置を受け、一匹ずつの隔離部屋に入れられて一週間隔離観察措置を取られるという。公共の場所や犬舎は毎日清掃と消毒が行われ、一週間後に問題が発生しなければ、ペットの性格ごとにグループわけして共同犬舎、猫舎にわけて生活することになる。だがその後も観察を続け、感染症の可能性がないかどうかを見極めていくという。万一、感染症の傾向が見つかった場合、指定病院に搬送することになっている。

 センターではすでに2800匹の捨てられたペットが収容されており、毎日消費する食糧は900キロ。今年は感染症の影響で収容ペット数が増えていけば、食費など含めて運営が厳しくなるのではないかと心配されている。

 専門家たちは、ずっと家の中で飼っているペット動物については、新型コロナウイルスに感染する可能性は低いと見ている。また香港では、人の感染者からペットに感染する例は報じられているが、ペットからヒトへの感染を証明する根拠はない。

 感染しているかどうかもわからない段階で、ペットを捨てたり、殺処分したりするよりも、家庭内でペットを日常的に清潔に保つこと、戸外活動をできるだけ減らすこと、戸外に出た後、家の中に戻るときには清潔に足や体を洗うこと、ペットの健康状態に留意することが重要という。(c)東方新報/AFPBB News