【3月18日 AFP】ガソリン車やディーゼル車による大気汚染が、都市における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による致死率を上昇させている可能性があると、公衆衛生専門家らが16日、AFPに明らかにした。

 欧州公共医療機関連盟(EPHA)は、都市部の大気汚染は高血圧や糖尿病、その他呼吸器疾患の原因となっているだけではなく、現在世界に拡大している新型コロナウイルスによる感染症の死者数を引き上げている可能性があると警告している。

 EPHAに所属する欧州呼吸器学会(EPS)によると、ガソリン車やディーゼル車の排出ガスは今も「危険な」水準にあり、現行および将来起こり得る感染症のパンデミック(世界的な大流行)において、最も脆弱(ぜいじゃく)な人を危険にさらす可能性があるという。

 EPSの会員で、イタリア・カリアリ大学(Cagliari University)のサラ・デ・マティス(Sara De Matteis)准教授(職業・環境医学)は、「大気汚染に長期間さらされたことが原因で発症または悪化した慢性の肺疾患や心疾患の患者は肺感染症にかかりやすく、死亡する可能性が他の人よりも高い」と指摘する。このことは新型コロナウイルス感染症にも当てはまるという。

 今のところ新型コロナウイルス感染症の致死率と大気汚染の関連性は証明されていない。だが、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する研究をまとめた査読済みの論文によると、大気汚染が中濃度の地域の患者は、汚染濃度が低い地域に比べ、致死率が84%高くなる傾向があることが分かっている。

 新型コロナウイルス感染症とSARSは似ており、重症の場合には呼吸不全を引き起こす可能性がある。

 新型コロナウイルス感染症の致死率データは不完全だが、暫定値では死亡した患者の大半は高齢者または心臓や肺などに基礎疾患があったことが示されている。

 欧州環境庁(EEA)によると、大気汚染が原因で早死にした人は欧州全体で年間約40万人に上っている。

 また欧州心臓病学会(ESC)誌「心臓血管研究(Cardiovascular Research)」に先週、掲載された論文によると、大気汚染により世界の寿命は平均して約3年短くなっており、年間880万人が早死にしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で欧州の中心地の一つとなっているイタリア北部は、主に交通渋滞に起因する微小粒子状物質「PM10」の濃度がとりわけ高い。同地域では新型コロナウイルス対策として移動制限措置が取られたため、大気中の亜酸化窒素(N2O)と微小粒子状物質が大幅に減少したことが、衛星データにより示されている。(c)AFP/Patrick GALEY