【3月13日 AFP】大気汚染が原因の早期死亡者数は全世界で年間880万人、欧州では79万人に上り、昨年発表された調査結果のおよそ2倍に及んでいることが11日に発表された論文で明らかになった。

 昨年発表された大規模な健康調査報告書「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)」によると、PM2.5とオゾンが原因とされる2015年の死亡者数は約450万人。欧州環境庁(EEA)が同じく2015年のデータを基にした発表では、最も毒性の高い3種類の大気汚染物質による早期死亡者数の推定は欧州連合(EU)内で48万人だった。

 超過死亡数(予測されていた死亡者数より総死亡者数がどの程度増加したかを表す推定値)のうちの40~80%の死因は心臓発作や脳卒中、その他の心臓血管疾患で、これらはスモッグ関連死の要因としてこれまで過小評価されてきたと研究チームは報告。車両、産業、農業などに由来する毒性汚染物質の混合物によって、早期死亡者の寿命は平均で2.2年早まっているとしている。

 欧州心臓病学会(European Society of Cardiology)の医学誌「ヨーロピアン・ハート・ジャーナル(European Heart Journal)」に掲載された論文の主執筆者で、独マインツ大学医療センター(University Medical Centre Mainz)のトマス・ムンツェル(Thomas Munzel)教授は、「今回の結果は、年間の超過死亡者数の原因が、喫煙より大気汚染が多いことを意味している」として、世界保健機関(WHO)の推定では、喫煙による2015年の超過死亡者数は720万人だと説明し、こう続けた。「喫煙は回避できるが、大気汚染からは逃れられない」

 今回の研究で対象とされている地域は欧州が中心だが、その他の地域にも最新の統計的手法が適用されている。

 論文の筆頭執筆者で、独マックス・プランク化学研究所(Max Planck Institute for Chemistry)のヨス・レリーフェルト(Jos Lelieveld)氏は、AFPの取材に電子メールで回答。最新の手法を適用した場合の中国の年間死者数は280万人で、これまでの推定数の2.5倍以上だと指摘している。

 研究チームは、天然および人工の化学物質が大気とどのように相互作用するかをシミュレーションするために、大気汚染物質への暴露と死亡率を示す最新の「世界暴露死亡率モデル」を疫学的なデータベースに適用した。疫学データベースには、人口密度、年齢、疾病リスク因子、死因などに関する最新の統計データが収録されている。