【3月11日 AFP】中国による炭素汚染は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済への影響を背景に抑制されている。だが、炭素排出の減速が気候問題に利益をもたらすとの期待はすぐに打ち砕かれる可能性が高いと、専門家らは指摘している。

 国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は10日、新型コロナウイルスの拡大で、地球温暖化を引き起こしている排出量が一時的に減少しているが、地球温暖化の問題が終わったわけではなく、問題から注意がそれてしまう恐れがあると警告した。

「排出量が数か月減少したという事実を過大評価してはならない。気候変動と闘うのはウイルスではない」

 各国政府はがたがたになった世界経済をテコ入れし危機から脱するため、大規模インフラ計画などへの投資を拡大しており、地球温暖化問題の改善は単なる結果論にすぎないと、専門家らも指摘している。

 今年11月にスコットランドのグラスゴーで開催予定の国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、議長国である英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット、Brexit)に焦点が集まっており既に脱線気味だ。その上、新型コロナウイルスのまん延という問題まで持ち上がってしまった。

 新型コロナウイルスによって発生した世界的緊急事態は、まるで実験を行ったかのように図らずも温暖化を加速させる因果関係を浮き彫りにした。

 フィンランドの研究機関「センター・フォー・リサーチ・オン・エナジー・アンド・クリーンエア(CREA)」によると、中国の二酸化炭素(CO2)排出量は3月1日までの4週間で2億トン減少し、前年同期比25%減となった。この減少量はアルゼンチンやエジプト、ベトナムなどの年間CO2排出量に匹敵する。

 中国経済の大幅な鈍化に伴い、国内の発電所の石炭消費量が36%減少している。また、石油精製所の原油処理量もほぼ同じ減少率となっている。