【2月14日 東方新報】中国で急激な感染拡大を見せている新型コロナウイルスについて、最初の宿主が野生動物である可能性が指摘され、中国の伝統的なジビエ食「野味」が存続の危機に面している。

【特集】収束の兆し見えず、新型肺炎が流行する中国の今

 中国政府は先月26日、新型肺炎感染の問題が解決まで、野生動物の販売厳禁を命じる公告を発布した。これは中国市場監督管理総局、農業農村省、国家林業草原局(林草局)が合同で出した2020年第4号公告となった。

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染源および感染経路を遮断することが目的で、公告発布日、野生動物の取引は全面的に禁止される。具体的には次の5か条が盛り込まれた。

①各地にある野生動物の繁殖場は隔離され、出荷、転売を厳禁。②各地の農貿市場、スーパー、レストラン、ネットショップなどにおいて、いかなる形であっても野生動物の取引を厳禁する。③社会各界で野生動物の違法取引、ルール違反を見つけた場合、表示のホットラインで通報すること。④各地の関連部門は検査を強化し、本公告の規定への違反を見つけた場合、法に基づき、厳格に捜査し、経営者、経営場所に対する営業停止、整頓、封鎖、犯罪容疑がある場合は公安機関に移送すること。⑤消費者は野生動物を食用することの健康リスクを十分に認識し、「野味」をやめ、健康的な飲食を行うこと。

 多くの中国メディアによれば、武漢の新型コロナウイルス肺炎は同市内にある華南海鮮市場(Huanan Seafood Wholesale Market)が発生源とみられている。初期の患者の大部分が市場の野味販売と関係があったという。中国紙、第一財経(China Business Network)の報道によれば、2019年12月31日午後、華南海鮮市場で数店舗が閉まっていた。近隣の店の販売員によれば、それら店舗は野生動物を販売していたという。この店舗の店長、店長の妻、店長の兄と岳父の4人がいずれも肺炎に入院していた。

 中央の肺炎対策専門家チームのリーダーで、SARS対策でも活躍した呼吸器感染の専門家、鍾南山(Zhong Nanshan)氏はこの市場を視察し、1月20日にメディアに対し、市場で多くの野生動物が売られていることから、ウイルスはタケネズミやアナグマ類の野生動物由来である可能性を指摘していた。

 また北京大学(Peking University)の許智宏(Xu Zhihong)元学長ら19人の研究者らはこのほど連名で、野生動物の違法取引、食用の根絶のために、野生動物保護法を緊急に改訂し、公共健康安全にかかわる条文を書き入れるべきだと全国人民代表大会に呼びかけた。北京大学生物保護学教授でもある自然保護社会発展研究センターの呂植(Lv Zhi)主任は、国家林草局と各地の野生動物主幹部門および執法部門が責任をもって、野生動物の違法取引を取り締まるべきだと主張、野生動物の違法取引を公共安全レベルの問題として新たに管理制度を制定すべきだとした。

 こうした知識人たちの提案を受けて、国家林草局の微博(ウェイボー、Weibo)オフィシャルアカウントは22日に、国家市場監督管理総局、農業農村部、国家林草局で「野生動物市場監督管理強化と積極的な防疫感染コントロールに関する緊急通知」を発布し、野生動物の違法売買取り締まり強化と、犯罪容疑に関しては適時送検を各地関連部門に求めた。

 専門家によれば、近年世界的に続出している新型感染症の70%以上が動物由来という。これらウイルスは本来自然界に存在するが、人間が宿主の野生動物と頻繁に接触したり、野生動物生息地に侵食したりすることによって、ウイルスが動物から人に感染、広がられる条件を生んでいるという。さらに交通の利便性、人口流動の増加により、いったん、ウイルスが人から人へ感染するように変異したのちは、爆発的流行が起きる確率が増大しているという。

 中国では野生の動物が滋養強壮などに効くと信じられ、一部の人たちに珍重されてきた。中国の本草学の古典「本草綱目」にも「タケネズミ」などが滋養強壮によく美味と、紹介されている。中国の野生動物保護法は、野生動物を違法に捕まえ売買することは禁じているが、野味自体は禁止されておらず、林草当局の許可を得て保護の名のもと、野生動物の捕獲、順化、繁殖などが行われており、それが事実上「野味」市場に流出している状況がある。また、養殖物よりも密猟による野生動物の方が、薬効が高いと信じられて高価で取引される状況もある。(c)東方新報/AFPBB News