■高級ブランドは口先だけ

 だがその数週間後、ディオールをはじめとする高級ブランドが、ビスコースによって環境を汚染していると非難する報告書が出された。市場の持続可能性に取り組む「チェンジングマーケット財団(Changing Markets Foundation)」はこの他、プラダ(Prada)やヴェルサーチェ(Versace)、フェンディ(Fendi)、アルマーニ(Armani)、ミュウミュウ(Miu Miu)、マークジェイコブス(Marc Jacobs)などの名前を挙げており、特にドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)を厳しく批判している。

 一方、過剰生産で環境汚染を招いていると高級ブランドが批判するH&M(へネス・アンド・マウリッツ)など一部のファストファッションは、改善がみられると評価された。

 ビスコースは絹の代用品として使われることが多い。生分解性の素材としてもてはやされており、環境保全のため石油由来の合成繊維の使用を控えたいと考えているファッション業界にとっての救世主とされている。

 報告書の執筆者であるウルスカ・トルンク(Urska Trunk)氏はAFPに対し、「私たちが調査した高級ブランドの4分の3は、自社のビスコースのサプライチェーン上の問題に対し有意義な対策を取っていなかった」と説明している。

 世界で3番目に多く使われている素材であるビスコースは木材パルプを原料としており、本来は持続可能性を備えた素材だという。

「不幸なことに、その生産過程の大半は不衛生な状況だ」とトルンク氏は指摘する。このため、インドや中国、インドネシアなどのビスコース工場の付近では水が汚染され、住民が精神疾患や脳卒中、がんの危険にさらされている。

 トルンク氏は英国人デザイナー、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)氏についてはその透明性と積極的な取り組みを称賛している。だが、他の大半の高級ブランドについては環境への取り組みは口先だけで、その言葉はむなしく響くとし、「非常に懸念している」と述べた。