【6月2日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」幹部の元妻で、身柄を拘束されているイラク人の女が、米中央情報局(CIA)に対して、IS最高指導者であるアブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者の捜索に手を貸していたと、英紙ガーディアン(Guardian)が先月31日に報じた。

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「ウム・サヤフ(Umm Sayyaf)」として知られる、ニスリン・アサド・イブラヒム(Nisrine Assad Ibrahim)容疑者(29)は、ガーディアンとのインタビューで、人質として自宅で拘束していた米国人女性に言及。援助活動家だったカイラ・ジーン・ミューラー(Kayla Jean Mueller)さんの拘束について、自身は積極的な役割を果たしていないと主張した。

 イブラヒム容疑者にはミューラーさんら人質たちを自宅で軟禁していた疑いがある。2013年にシリア北部の都市アレッポ(Aleppo)で拉致されたミューラーさんは、同容疑者の自宅でバグダディ容疑者から性的暴行を受けていたとされる。

 その一方、捜査当局がガーディアンに明かしたところによると、イブラヒム容疑者は自身が米軍に身柄を拘束された際、CIAやクルドの情報機関がバグダディ容疑者の隠れ家やネットワークの概要が得られるよう手助けしていたという。

 2016年2月にイブラヒム容疑者は、イラク北部モスル(Mosul)にあるバグダディ容疑者が滞在していたとされる自宅を特定していたものの、これを受けて米国が空爆を要請することはなかった。

 イブラヒム容疑者は、イラク北部クルド自治区の都市アルビル(Arbil)にある勾留施設で、「私は彼らに、隠れ家がどこにあるのか教えた」と明かし、「その家が彼(バグダディ容疑者)に提供された家々の一つであること、また最も気に入っていた場所の一つだったことから、彼がその場所にいると分かっていた」と語った。

 バグダディ容疑者は2014年、シリアとイラクの広範囲にまたがった自称「カリフ制国家」樹立を宣言。ISは度重なる攻勢を受けて徐々に領土を失い、バグダディ容疑者は鳴りを潜めていたが、先月になって5年ぶりに姿を現し、ISがその前月に領土を失ってしまったことを認めている。

 ガーディアンによると、2015年5月、シリア東部にあるオマル油田(Al Omar Oil Field)を米軍が急襲した際、イブラヒム容疑者は身柄を拘束され、ISの幹部だった夫のアブ・サヤフ(Abu Sayyaf)容疑者は殺害された。その後、イブラヒム容疑者はアルビルの裁判所で、死刑判決を言い渡された。