【8月23日 AFP】約3000万年前に生息していた、歯がなく、ひげを生やした小型のイルカの想像図が、このほど初めて公開された。想像図は、米サウスカロライナ(South Carolina)州チャールストン(Charleston)付近の川で見つかった頭部の化石を基に制作された。

 イルカは「Inermorostrum xenops」と名付けられた。科学者らは今回、このしし鼻のイルカの進化や、顔の特徴、さらにはその食性について考察を行った。英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に研究論文が発表された。

 この小さなイルカは、口先から尾までの長さが1メートルあまりで、そのサイズは現代のバンドウイルカの約半分だ。そして皮肉なことに、この歯のないイルカは、マッコウクジラやシャチなどを含むハクジラの系統の初期の派生生物だという。

 クジラ目は、ハクジラとヒゲクジラの系統にそれぞれ分けることができる。歯のないヒゲクジラは、ろ過摂食生物で大量の海水をこして小さなエビのようなオキアミやプランクトンを捕食する、ザトウクジラやシロナガスクジラなどがこれに当たる。

 米チャールストン大学(College of Charleston)教授で、論文主執筆者のロバート・ボゼネッカー(Robert Boessenecker)氏は「Inermorostrumは、わずか400万年の間に、上下の歯が精密にかみ合うより古い時代のクジラから、歯が無く、吸い込んで捕食する生物に進化した」と論文に記した。

 進化の時計で400万年は「ほんの一瞬」だ。この短い期間にイルカは歯を失い、マズルが縮んで筋肉質の唇が発達した。歯を持たないため、Inermorostrum xenopsの餌は小魚、イカその他柔らかい生き物に極端に限られていたと考えられる。

 当時、急速な進化を遂げたハクジラは他にもいた。研究者らは、短いマズルと長いマズルが、幾度となく、それぞれ個別に進化していたことを確認しており、自然淘汰(とうた)が偶然のプロセスではないことが示唆されているとした。

 ボゼネッカー氏は、現代のバンドウイルカなどのマズルは、これら両極端のちょうど中間に落ち着き、「魚の捕獲と吸引捕食の両者を可能にする最適の長さ」だと説明した。(c)AFP/Marlowe HOOD