【8月11日 AFP】欧州では地球温暖化の影響で、洪水の発生時期に変化が生じており、一部河川の増水が通常より早まったり遅れたりする現象が起きている。研究論文が11日、発表された。この現象は欧州全域において、農業や日常生活に影響を及ぼしているという。

 米科学誌サイエンス(Science)に論文が掲載された今回の研究は、38か国に位置する4000以上の水文観測所で収集されたデータを対象としている。調査の対象となった期間は50年で、欧州で実施されたこの種の調査としては過去最大規模となった。

 論文の主執筆者で、オーストリア・ウィーン工科大学(Vienna University of Technology)水力工学・水資源管理研究所のギュンター・ブローシュル(Guenter Bloeschl)教授は、「欧州の北東部、スウェーデン、フィンランドやバルト諸国においては、1960年代や1970年代に比べ、現在では洪水が1か月早く発生する傾向がみられる」と話す。

「(60年代、70年代)当時、洪水は大抵4月に起きていたが、現在では3月に起きる。その理由は、温暖化の影響で雪が以前に比べて年内の早い時期に解け始めているからだ」

 また、欧州西部の大西洋(Atlantic Ocean)沿岸地域における冬季の洪水も、その発生時期が秋近くにまで早まる傾向がみられる。これは、土壌の水分量が年内のより早い時期に限界値に達するためだという。

 一方で、英国北部、アイルランド西部、スカンディナビア(Scandinavia)半島沿岸部、ドイツ北部などの地域では、洪水の発生時期が20年前より約2週間遅れる傾向がみられるようになった。

 さらに、冬の嵐の到来が以前に比べて遅くなっていることも指摘された。この傾向については「赤道と北極の間の気圧勾配の変化に関連している」可能性が高いと論文は述べている。気圧勾配の変化も気候温暖化を反映している可能性がある。

 他方で、地中海(Mediterranean Sea)沿岸での気温上昇に伴い、一部沿岸地域での洪水の発生時期がシーズンの後半にずれ込むようになっているという。

 今回の研究についてブローシュル教授は、「欧州全域における洪水発生時期の長期にわたる調査により、洪水の原因を読み解くための非常に精度の高いツールがもたらされる」と述べ、「これまでは全くの推測にすぎなかった関連性を特定することが可能になる」と説明した。(c)AFP