【1月26日 AFP】致死性の皮膚がんと良性の病変を、一流の皮膚科専門医に匹敵する正確さで識別できる画像スキャンソフトが開発された。米スタンフォード大学(Stanford University)の研究チームが25日、発表した。

 研究チームは、この多くの患者の命を救う可能性があるこの技術について、近くスマートフォンで利用できるだろうとしている。実現すれば、1960年代のSFドラマシリーズ「スタートレック(Star Trek)」で、医療主任のドクター・マッコイ(Dr McCoy)が使う診断用機器をほうふつとさせる話だ。

 研究チームは、米グーグル(Google)のアルゴリズムを適用して開発されたソフトウエアを用いて、皮膚疾患の画像13万枚近くをデータベース化した。ソフトウエアは、ネコとイヌを見分けるといった具合に、物体の画像に基づくカテゴリーを識別する。有効に機能させるために、良性病変と上皮性悪性腫瘍を区別できるようにする必要があると考えられたためだ。

 コンピューター科学者らからなる研究チームは、「ディープ・ラーニング(深層学習)」と呼ばれる一種の人工知能(AI)と画像処理を組み合わせるために、アルゴリズムを「訓練」した。診断結果は最初から、驚くほど正確だった。

 論文の主執筆者で、米スタンフォード人工知能研究所(Stanford Artificial Intelligence Laboratory)のセバスチャン・スラン(Sebastian Thrun)教授は「われわれの考えが変わったのは、まさにこの時だった」と話す。そして、これが単なる学生向けの授業のプロジェクトではなく、人類のために偉大なことを成し遂げるチャンスと捉えたと説明した。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文によると、研究チームが開発し、医師の協力を得て微調整を施したこのソフトウエアは、有資格の皮膚科専門医21人で構成される医師団と同等の診断精度を示したという。

 米国では、新たに皮膚がんと診断される患者数は毎年500万人以上に上る。

 皮膚がんの中で最も悪性度の高いメラノーマ(悪性黒色腫)の場合でも、最初期の段階で発見できれば、5年生存率は約97%に達する。しかし、それより後の段階で発見された場合、5年生存率は約14%にまで低下する。