【5月22日 AFP】イラクの首都バグダッド(Baghdad)で20日に発生した旧米軍管轄区域「グリーンゾーン(Green Zone)」にデモ隊がなだれ込んだ事件で、治安部隊の発砲によって少なくとも2人のデモ参加者が死亡したことが分かった。複数の当局者が21日明らかにした。

 政治改革を求めているイスラム教シーア派(Shiite)の若い指導者ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師によって約1か月前に始められた一連の抗議行動で死者が出たのは初めて。イラクの指導層は政治的混乱がさらにエスカレートする恐れがあると警告を発している。

 死亡した2人の遺体は、イラクのシーア派聖地ナジャフ(Najaf)にある、同派信者数百万人の墓がある世界最大の墓地「ワディ・サラーム(Wadi al-Salam)」に埋葬された。

 葬儀の最中に死者のうち1人の親族は「平和的なデモに実弾やゴム弾、催涙ガスが放たれた」と述べ、過度な武力を使用したとして政府を非難した。

 サドル師支持者のデモ隊は治安部隊と相対し、政府の重要機関があり厳重に警備されているグリーンゾーンになだれ込んだ。そのうち少人数のグループがハイダル・アバディ(Haider al-Abadi)首相の事務所に乱入したが、すぐに退去したという。

 治安部隊は、デモ隊が3週間前に初めてグリーンゾーンに突入し議会に乱入した時よりも厳しい対応を取り、デモ隊に激しく催涙ガスを浴びせた。

 イラクの治安・医療当局者によると、20日の衝突で治安部隊は高圧砲水砲や音響爆弾なども使用し、少なくとも57人の負傷者が出たという。一方のデモ隊にも石やがれきなどを投げた者がいた。デモの最中に治安部隊側が実弾を発砲し、そのほとんどは空に向けたものだったが、デモ隊のうち2人が銃弾を受けて死亡した。