【4月7日 AFP】数々のウェブサイトのコメント欄にウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領への称賛と政敵をさげすむ書き込みで「砲撃」を続けたリュドミラ・サウチュック(Lyudmila Savchuk)さん(34)──彼女は、ロシア政府の「サイバー軍」に参加した理由について単純に「お金」だったと語る。仕事はオンラインの求人広告で見つけたという。

 サウチュックさんが書くことを命じられたメッセージとは、「プーチンは素晴らしい」「ウクライナ人はファシストだ」といった政府寄りの言葉ばかり。「私たちの仕事は、政府の政策とプーチンの人格を持ち上げるコメントを書くことだった」と当時を振り返った。

 ネットの「荒らし」役を務めるために、彼女はロシアで人気のプラットフォーム「ライブジャーナル(LiveJournal)」で、主婦、学生、アスリートといった人物になりすましてブログを複数開設。ブログそのものは政治的な内容ではなかったが、そのアイデンティティーを使ってニュースサイトのコメント欄などに書き込みを行うことが実際の仕事内容だった。1日のコメント数は平均100を数えたという。

 仕事では毎朝、触れるべきトピック、そしてプロパガンダのアイデアを記したメッセージがその日の課題として送られてきた。基本はウクライナに好意的な記事をみつけて批判的なコメントを書くこと。「ウクライナ政府にとっては、国民より軍のニーズのほうが大事だ」といったように。

 サウチュックさんは「サイバー兵士」として約2か月間働き、3月に辞めた。政府のプロパガンダを拡散し、本来なら議論の場であるはずの書き込み欄を荒らすことからこの仕事は「荒らし」とも呼ばれている。

 彼女によると、ロシア第2の都市サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)北部の繁華街にあるごく平凡な建物に「荒らし」の仕事部屋はあったという。

 求人に応募した後の面接は、名前をオレグとしか明かさない男性によって行われた。彼の最初の質問は「ウクライナにおけるわれわれの政策をどう思う?」だった。

「他の多くの人たちと同じように、私はその賃金に魅力を感じた」と2人の子供を育てるサウチュックさんは言う。毎月の賃金は4万~5万ルーブル(約8万6000円~10万8000円)で、これはサンクトペテルブルクでは比較的良い待遇だという。

 ロシア政府を称賛し、政敵をたたくこのサイバー軍の行動は、ウクライナ危機以前から存在していた。

 2013年には、露独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)の記者が同市周縁部のある施設に潜入取材し、約400人が同様の作業に従事していると報じている。この頃から、国内外メディアに対する「荒らし」行為が続発し、多くのサイトでコメント欄が閉鎖される事態にまで発展しているという。

 地元メディアによると、現在はウクライナ問題を集中的に取り上げている同組織は、外国語やフォトショップのスキルを持った「兵士」たちのために、新たに特別な部門も創設したとされる。(c)AFP/Marina KORENEVA