【5月16日 AFP】米中央情報局(CIA)の覆面工作員とみられる人物が在ロシア米大使館職員になりすまして工作活動を行っていた問題をめぐり、ロシア外務省15日、「粗雑でまぬけ」な活動を展開したとして米国を非難した。

 ロシア外務省は同日早朝、マイケル・マクファール(Michael McFaul)駐ロシア米国大使を呼び正式に抗議した。ただ、この「冷戦時代さながらの工作活動」が、より大きな問題に発展することを両国とも望んでいないことは示されたようだ。

 ロシア連邦保安局(Federal Security ServiceFSB)によると、このCIA工作員とみられる人物は北カフカス(Northern Caucasus)連邦管区に関する情報を求め、10万ドル(約1000万円)でロシアの治安機関員を抱き込もうとしていたとされ、また「諜報活動の典型的な備品」である現金と、かつらや眼鏡といった変装の道具を所持しており、在露米大使館の3等書記官になりすまして活動していたという。

 露タス通信(ITAR-TASS)が伝えたところによると、ロシアのユーリ・ウシャコフ(Yuri Ushakov)大統領補佐官は、両国大統領が交わした治安機関員同士の協力をより推進させるとの約束が米中央情報局(CIA)にも米大使館にも浸透しておらず、さらには「極端に粗雑でまぬけな工作活動」が展開されたことに驚きを隠せないという。

 身柄を拘束されたのは、在ロシア米国大使館のライアン・C・フォーグル(Ryan C. Fogle)3等書記官とされる人物。拘束から数時間後に大使館側に身柄を引き渡され、「外交上好ましくない人物」として国外退去が命じられた。

 露コメルサント(Kommersant)紙によると、この「書記官」は、4月に発生したボストン・マラソン(Boston Marathon)爆破事件の容疑者に関する情報を求め、ダゲスタン(Dagestan)共和国でロシア治安機関員の勧誘を試みていたとされる。
 
 この問題をめぐり米国務省は、在露米大使館の米国人スタッフが短期間拘束されたことは確認できているが、この人物がCIA工作員だったかのについてはコメントを控えた。(c)AFP/ Stuart WILLIAMS