【12月27日 AFP】米首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)で1年前、住まいを失い絶望感に襲われた日のことを、フィラナ・ホールさん(23)は今も鮮明に思い出す。

 ホールさんは昨年12月に起きた出来事を振り返りながら「その日の朝、途方に暮れた。夜になったらどこに行けばいいのか。私たちは夜中の12時まで外にいた。電話をかけて知り合いにお願いしてまわりながらね。でも誰も家族として受け入れてくれなかった」と話した。

 結局、ホールさんと3歳の息子ガブリエル君はホームレス支援シェルターに駆け込み、一方27歳の夫と7歳になるもう1人の息子リチャード君は親戚の家に転がり込んだ。

 黒人のホールさん一家が再び一緒に暮らし始めたのは、ようやく3月になってからだった。地元の支援組織「ワシントン・ホームレス連合(Washington State Coalition for the Homeless)」が運営する4部屋タイプのアパートへ入居した。しかし、それまでの毎日は不安定な低賃金の仕事続きで、夜は友人たち宅のソファで過ごし、失望を感じる日々だったという。

■浴槽がベッド代わり

 このような家庭は「隠されたホームレス状態」だというのは、ワシントン郊外バージニア(Virginia)州アーリントン(Arlington)に本拠を置く慈善団体「女性と家族のための扉(Doorways for Women and Families)」のヘザー・オマーリー(Heather O'Malley)氏だ。「単身世帯用のアパートの部屋に、2人、3人、4人家族が暮らすようになり、床やソファ、浴槽、車の中などで睡眠を取る。しかも毎日、どこへ行き着くのかは分からないままで」

 ワシントン首都圏政府調整協議会(Metropolitan Washington Council of Governments)の報告書によれば、今年6月のある1日の時点でホームレス状態に陥っていたのは約1900世帯で、その数は前年比で11%増えていた。またホールさんの2人の息子のように、2013年中に全米で一時でもホームレス状態を経験した子どもたちの数は250万人に上り、30人に1人の割合になる。

 支援組織「全米ホームレス連合(National Coalition for the HomelessNCH)」はこの数字を「記録的」だと評し、米国は先進工業国の中で最も多くのホームレス人口を抱えていると警告している。