「ダウード」というファーストネームだけを明かしてくれた退役軍人の男性(52)は、8か月間の失業の後、調理師の仕事に就いた。3年前に立ち退きにあい、12歳の娘と2人で友人宅の居間を間借りして暮らしていたが、最終的にはワシントンD.C.からポトマック川(Potomac River)を挟んで対岸のアーリントンに住まいを見つけた。

 ひとり親のダウードさんはホームレスの頃を振り返って「人生で失敗したように感じるからとてもつらい。他人と一緒に暮らすことは、自分が社会の一員でないように感じる。親としても娘を失望させていると感じた」と語った。

■必要とされる迅速なサポート体制

 セイラム州立大学(Salem State University)の社会学者で、NCHの理事も務めるイボンヌ・ビッシング(Yvonne Vissing)氏は「ここ数年の景気低迷で、家計は何とかやっていくのも難しくなっている。常勤で週40時間働けても最低賃金で依然、貧困ラインを下回ることになる」と説明する。「ホームレス状態の人たちの大半は働いているが、生活費が追いつかない。価格的に手の届く住宅があるかどうかが重要な問題だ」

 オマーリー氏も「アーリントンでは3部屋タイプのアパートで月2000ドル(約23万円)の家賃を払うために、最低賃金7.25ドル(約860円)ならば、週70時間働く必要がある。交通費や生活費はまた別だ」と話す。「悪循環に陥ると、すぐに生活を維持するので精いっぱいとなり、抜け出すのはほぼ不可能になる。それに気づく前に立ち退きに直面し、行き先がなくて途方に暮れてしまう」

 最も大きな犠牲を強いられるのは子どもたちだ。NCHによると、安価な加工食品ばかり口にすることで栄養失調となったり、遊ぶ場所や学校の宿題をする場所もなかったりする。さらに、病気になったり発育が遅れたりするリスクは4倍も大きい。

 オマーリー氏は「こうした状況に置かれた大人たちは多くの場合、現実を隠し通せると思う。自分たちのストレスや恐怖、不安を隠すことができると考える。だが、子どもたちは賢い。周囲の状況をそのまま吸収し、親たちが隠そうとしていることを受け止めようとする」と話す。

 また「子どもたちもしばしばストレスを感じ、安全に落ち着ける場所がないのは自分が悪いからだと考える。そうした不安を内面化すると、さまざまな学習障害に至ってしまう」とオマーリー氏はいう。ホールさんの息子リチャード君はハンサムな少年だが、やせて人見知りがちで、そうした典型的な例といえる。ホールさんは「リチャードは自己表現の面で問題を抱えてきた。以前は、ただただ泣きわめく時があった。ちょっとしたことで泣いてしまう。学校でも、外出先でもね。原因が分かっていても、それを言いたがらなかった」

 若者には適応能力があり、そして実際に適応する。しかし、単にずっと住み続けられる住居だけではなくセラピーや、両親たち向けの家計のやりくりに関するアドバイス、安定した再雇用を確保するための支援など、サポートが迅速に提供される必要がある。

 ホールさんは勉強を再開し、先月にはコビーと名付けた男児を出産した。現在住んでいるアパートには2年間暮らすことができる。将来は一軒家を手に入れたいと願っている。「ここを出たら、前庭も裏庭も付いている家が欲しい。バーベキューが大好きだから」(c)AFP/Fabienne FAUR