【11月4日 AFP】イタリアの首都ローマ(Rome)の観光名所、円形競技場コロッセオ(Colosseum)のアリーナの床を復元する案について3日、賛否両派が論戦を展開した。

 約2000年前の紀元前80年に完成された古代ローマの円形競技場のアリーナには元来、木の床があり、その上に砂が敷かれていた。床の下には剣闘士たちをアリーナに送り出すためなどに使われた複数のトンネルなどがあったが、床は19世紀後半に発掘などで撤去された。

 今年7月に考古学者のダニエレ・マナコルダ(Daniele Manacorda)氏が床を復元すべきだと提唱した案について、イタリアのダリオ・フランチェスキー二(Dario Franceschini)文化相が2日、ツイッター(Twitter)上で熱狂的な支持を表明した。

 マナコルダ氏の案はコロッセオのアリーナで、文化イベントやコンサート、果ては古代ローマ時代のスペクタクルなショーを再現し上演しようというもの。また、かつては舞台装置や小道具、さらには檻に入れられたゾウといった動物などを昇降させていた人力エレベーターや滑車が収まっていたアリーナの地下部分は、博物館にする計画だ。

 ローマ考古学財監督局の元責任者アドリアーノ・ラ・レジーナ(Adriano La Regina)氏も3日、伊メディアに対し、調査は必要だが可能だろうと述べ「コロッセオは壊れやすそうに見えるかもしれないが、数万人を収容できるスタジアムとして建造されている」と前向きに答えた。

 しかし、こうした案に納得しない人々もいる。古典考古学者でイタリアの文化遺産評議会の議長を務めたこともあるサルバトーレ・セッティス(Salvatore Settis)教授は、イタリア経済は長引く不況に苦しんでおり、そうした類のプロジェクトへ投資する余裕はほとんどないと反対する。同教授は「われわれは今という文化的伝承の劇的な瞬間を生きている。こうした中で、コロッセオの床の復元は優先すべきことだとは思わない」と語った。

 高さ48.5メートルのコロッセオは帝政ローマ時代に建てられた最大の円形競技場で、年間600万人が訪れている。イタリアの富豪ディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)氏の出資による修復工事は大幅に遅れて昨年9月に始まり、16年に終了する見込み。(c)AFP