■消費リテラシーが高い街、ポートランド

 「正直な話、なぜ日本で今頃サードウェーヴと騒がれているかはよく分からないんだ。ポートランドではコーヒーもビールも既に10年くらい前から“クラフト”が盛んだから」。

 ポートランド内でコーヒーショップ「クーリエ・コーヒー(Courier Coffee)」を経営するジョエル・ドムレイス(Joel Domreis)はそう語る。幼い頃から一日中コーヒーショップで過ごすこともあったジョエルは、13歳の頃からコーヒーショップでアルバイトをはじめた。9年前には自家焙煎をはじめ、4年前にクーリエ・コーヒーをオープン。今年7月に結婚した日本人妻のサキコさんと共に徹底的にこだわったスペシャリティコーヒーを提供する。約60軒のロースタリーが集結したサードウェーヴ・コーヒーの聖地、ポートランドの中でもひと際目立つ存在だ。

 サードウェーヴのはじまりがニューヨークやロサンゼルスの都市ではなくポートランドなのは、ロケーションにヒントがあるとジョエルは言う。

 「僕たちは何をやるにしてもロケーションに困らないんだ。ポートランド近郊には小規模の有機農家がたくさんあって、ファーマーズマーケットで売られているものはすべて近郊のもの。有機農家の直売だから安心して口にできるし、新鮮な上に安価で手に入る。ちょっと行けば魚釣りができるし、ワインは海沿いのワイナリーに行けば手に入る。海水浴やスキー、温泉も片道2時間あれば行けるんだ。思い立ったらすぐ行動できる街なんだよ」

また、ポートランドの人々はオーガニックやエコな生活を意識して消費しているわけではないという。

「ポートランドは人口のほとんどが他の都市からの移住者だけれど、オーガニックでエコロジーなものは意識的に流行しているわけではない。オーガニックやエコを意識して、民度が高い暮らしを送ろうと心がけているというよりは、ここではそれが当たり前なんだ。ポートランドの人はどこで買い物をするか、誰にお金を払うかということに関して民度が高いと思う。つまり、僕たちはお店に行く場合、ローカルかローカルじゃないかという二択で商品を選ぶことになる。メジャーなコーヒーショップか、それともローカルなコーヒーショップか。それは日本でも同じことだと思う。僕が日本に行くなら、もちろんローカルな方を利用すると思うよ。日本の喫茶店が大好きなんだ」