【8月29日 AFP】フランス料理の精緻な食の伝統が国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産に登録された後も、フランスは自国の食文化を守るため全力を尽くしている。7月、フランス当局は国内の飲食店向けに「自家製」の認証制度を設けた。

 新制度は、レストランで提供される料理について、自家製か、それとも冷凍食品など出来合いの料理なのかを厳格に区別するものだ。レトルト食品や冷凍食品を温めただけの料理を、いわゆる「レストラン価格」で出す店が増えているとの苦情を受けての措置だ。

 これまでフランスでは、食品卸売業者から購入した調理済みのテリーヌやデザートでもメニュー上では「自家製」とうたっている例が少なくなかった。今後は「自家製」「手作り」といった表現は規制の対象となり、実際に店内で製造していなかった場合は、飲食店の経営者に最大2年の禁錮刑か最大30万ユーロ(約4000万円)の罰金が科される。

 一方、シェフが一から調理しているレストランは、鍋と屋根をデザインした「fait maison(自家製)」の新ロゴマークを掲示して、その店ならではの味を宣伝できるようになった。

「この認証制度で全ての問題が解決するわけではないが、1つの勝利ではある」と、首都パリ(Paris)のレストラン「メディテラネ(Medi Terra Nea)」の共同創業者、ステファン・コルディエ(Stephane Cordier)氏は言う。「これで、他人が作った真空パック詰めの料理を温め直しているだけの店を見分けることが可能になる」

 レストラン・ホテルの従業員労働組合「Synhorcat」の委託で昨年実施された調査では、フランス国内の飲食店の3分の1が、卸売りの加工食品を利用していると回答した。だが、世界に名だたる名シェフ、アラン・デュカス(Alain Ducasse)氏は、状況はもっと悪いと考えている。同氏は昨年、AFPの取材に、全仏のレストラン15万店の実に4分の3が、出来合いの料理しか提供していないと語っている。