【11月19日 AFP】南極やグリーンランドの氷床下で大規模な洪水が発生しているとした米メーン大学(University of Maine)の研究チームによる調査結果が16日、英科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)』(電子版)で発表された。氷河の海洋流出速度を調べた研究結果は、海面上昇の速度の計測への応用が期待される。
 
 極めて最近になって、南極の氷床に埋もれた地下湖で定期的に大量の水が流出している事実が確認されているが、目視不可能な氷河の底部で発生する洪水の影響を計測したのは、メーン大の調査が初めてだ。

 同大の気候変動研究所のリー・スターンズ(Leigh Stearns)氏が主導する研究チームは、氷床観察衛星ICESatによる観測データと、50年間におよぶ南極東部バード氷河(Byrd Glacier)の流出記録とを照合した。

 その結果、氷床底部の水路から、14か月にわたって1.7立方キロメートルの水が流れ出している事実を確認。この期間、下流にある全長75キロの氷河の移動速度は10%程度加速されたという。

 このことは、氷河地底湖からの湖水流出が、氷河の変動に大きく関与する事実を直接示すものだ。その原因について研究チームは、流れ出す水分が潤滑剤となって氷の流出を加速させていると分析している。

 調査結果は、高まる氷河溶解への懸念に、科学面から警鐘を鳴らすものとなった。(c)AFP