■ジョージ・ルーカスとの知られざる関係

 メタリックなロボットは空山の代名詞だが、最初にロボットを描き始めたのは、1978年の「サントリー(SUNTORY)」の広告がきっかけだ。「最初は『スターウォーズ(STAR WARS)』のビジュアルを使おうとしたが、権利が面倒くさかったらしい。それで私が人型ロボットと相棒の犬型ロボットを描いた」。そうして発表した作品は監督ジョージ・ルーカス(George Lucas)の目に留まり、今ではお互いリスペクトし合う関係だという。

「スターウォーズ」第1作公開当時のことは今でも空山の記憶に新しい。「タイトルバックを見ただけでもびっくりした。試写会のあと、そうそうたる評論家たち全員が立ち上がって手を叩いたもんね」。一度、ルーカスフィルム(Lucasfilm)本社にある「スカイウォーカーズランチ (Skywalker Ranch)」にも招待されたが、残念ながらルーカスとの面会はかなわなかった。もし出会えていたら、二人はどんな会話を交わしたのだろうか。

©Hajime Sorayama Courtesy of NANZUKA

■光の中にいる「女神」

 空山のメタリックな表現は、絵の具を使って光を描くことへのファンタジーから生まれているという。「極端に言えば、金箔やプラチナの入っている絵の具を塗りたい」。だがイラストレーターとアーティストの両方の顔を持つ空山は、原画のクオリティーと同時に「複写や印刷ができること」にこだわる。そこで編み出されたのがエアブラシなども使い、印刷物の上で光っているように見える現在の手法だ。

「私は光の中に神を見ている。炎を信仰する『拝火教』という宗教があるように、人は光るものをありがたがる。太陽もスカラベも、原始の神様はみんなそう。私にとっての神は女神で、光も女の人なのよ」

©Hajime Sorayama Courtesy of NANZUKA

■ケイト・モスを解剖する

 その「女神」として作品に現れるのが、マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やピンナップガールのアイコンだ。思春期にハリウッド映画を見て、華やかなスターに憧れたという空山は、その魅力をロボットに置き換えた。ニューヨークで個展した際には、モデルのケイト・モス(Kate Moss)をロボット化したという。「彼女たちのどういった部分が大衆に受けているのか?というところを研究する。私は右脳でそれを解剖し、左脳で数値や文章に置き換え、それをまた右脳で表現している」

 人を「解剖する」というタブーを、アートの上で実現する空山基。現在は永井豪(Go Nagai)原作「マジンガーZ(Mazinger Z)」のコラボレーションに取り組んでいる。光やSF、女神などあらゆる要素を組み合わせ、現代のダ・ヴィンチは、これからもメタリックな理想像を生み出していくのだろう。右脳と左脳を自在に使い分ける彼の唯一無二のイマジネーションには、まだまだ人も時代も追いつけそうにない。

たくさんのおもちゃが溢れるアトリエは空山のイマジネーションそのもの(2017年1月19日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■商品概要
・作品集「SORAYAMA Hajime Sorayama」(本体、ブックケース、サイン付き)
100冊限定のスペシャルエディション 162,000円、通常版 10,800円
※ともに税込
サイズ:34.5x25.5x4.3 cm(ブックケースを含め)
出版元:HIOSHINA
刊行日:発売中

■関連情報
・空山基 公式サイト:http://sorayama.jp/
・NANZUKA 公式サイト:http://nug.jp/
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