■センスが良く、業界に愛されたミシェル夫人

 ミシェル夫人は、手頃なハイストリートブランドとオートクチュールとを巧みに取り混ぜ、新進気鋭でマイノリティーのデザイナーたちの服も採用しながら、親しみやすさとシックな雰囲気を難なく自分のものにしてしまうセンスでファッション業界を魅了した。

 一方、メラニア夫人がどのような方向性を目指すのかはいまだにはっきりしない。数年前までは、時代に左右されないエレガントさと、米仏ファッションへの愛着で知られたジャクリーン・ケネディ(Jacqueline Kennedy)元大統領夫人のような「トラディショナルな」ファーストレディーになりたいという願望を口にしたこともあった。

 しかし、メラニア夫人にとってようやくその役割を果たすタイミングがめぐってきた今、前例のない数のデザイナーらが、そもそも自分のスタイルは彼女に合わないと宣言したり、トランプ氏が他者を侮辱し、分断をあおるような選挙戦を行ったことを理由に、衣装提供の自粛を申し合わせたりしている。

 最初に声を上げたデザイナーは、ソフィー・テアレット(Sophie Theallet)氏だった。テアレット氏は昨年11月、「トランプ氏が大統領選の間に人種差別、性差別、外国人嫌悪をあらわにした表現は、私たちが生き方の指針としている共通の価値観に合致しない」という見解を表明した。

 露骨な反応が起きたのも無理はない。民主寄りのファッション業界は概して、トランプ氏の対立候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官を支持し、クリントン氏の選挙戦にも献金していた。

 マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)氏もファッション情報紙WWDに対し、「個人的には、トランプ氏とその支持者によって傷つけられることになる人々を助けることの方に注力したいと思う」と語っている。