【10月1日 AFP】ラグジュアリー(高級品)の大きな特徴は「お高くとまって」いて謎めいていることだが、ベルギーファッション界の先駆者、ブルーノ・ピータース(Bruno Pieters)氏(38)はこの伝統を打ち破り、高級志向の消費者に「全てにおいて透明なショッピング」の提供を目指している。

 ピータース氏は2012年、インターネット通販専門のファッションブランド「Honest by(オネストバイ)」を立ち上げた。このブランドは複雑な商品供給プロセスに関する詳細を、消費者に開示している。ピータース氏は、通常のファッション業界では「作っているのは子どもたちだとも知らずに、1着5万ユーロ(約660万円)のドレスを販売できてしまう。この業界で自問する人はほとんどいない」と批判する。

 だが、4月にバングラデシュで縫製工場などが入ったビルが崩壊し、1100人が死亡した事故が起きたことをきっかけに、衣料労働者の劣悪な労働環境が議論されるようになった。

 Honest byのサイトでシャツやスーツなどのアイテムをクリックすると、素材をどこから調達したか、どこで縫製されたか、原価はいくらかなど、項目別に記された詳細なリストが現れる。顧客が「素材の調達先や洋服がどこで、いくらで作られたのかを確かめることができるようにした」とピータース氏は話す。例えば、シルク製のグリーンのチュニックをクリックすると、生地そのものだけでなく、ボタンや縫製部分、タグについても情報を得ることができる。原価69.14ユーロ(約9200円)のチュニックの販売価格は225.87ユーロ(約3万円)。差額はHonest byが生み出した付加価値であることがウェブサイトには明記されている。

 ピータース氏は「中国で製造してメイド・イン・フランスのラベルを付けるというやり方はもう通用しない」と述べ、「近いうちに透明性が高級ビジネスにとって不可欠になる。対価を払う唯一の理由は品質とノウハウだから」と加えた。

 ピータース氏は高級ファッション畑出身で、「ヒューゴ・ボス(Hugo Boss)」のアートディレクターを務めたこともある。高級品産業を支配する利益至上主義に疲れ果てた同氏は2年間、ファッション業界を離れ、その後、honest byを設立した。同氏によると、デザイナーとのコラボレーションで得られる利益の20%は慈善団体に寄付することになっており、同社全体としてはまだ利益を生み出していないという。

 透明性を掲げる同氏だが売り上げについては公表していない。ビジネスにおける透明性とは「業績を公表することだが、これに興味があるのは株主だけ」と同氏は語った。(c)AFP/Catherine BOITARD