【5月9日 AFP】大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇により、コメや小麦などの主要穀物の栄養成分が大きく減少するとの研究が、7日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 品種開発メーカーは、これらの穀物がCO2排出量の急増に脆弱(ぜいじゃく)であることに対策を講じるべきだと、研究者らは提言した。

 米ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public HealthHSPH)などの研究者らは、日本、オーストラリア、米国の7か所の実験農場で穀物6種41品種の調査を行った。実験農場の植物は、水平に設置したガスパイプから放出される高濃度のCO2にさらされた。

 通常の大気のCO2濃度は約400ppm(ppmは100万分の1を意味する単位)で、現在1年に2~3ppmの速度で上昇している。

 実験農場の植物は、研究チームの作った「CO2を増量」した環境で、546~586ppmのCO2濃度の中で栽培された。これは、悲観的なシナリオで今世紀半ばにも到達するとされているよりは低い濃度。国連(UN)は気温上昇を2度以内に抑えることを目標にしているが、このシナリオでは気温は産業革命前より3度以上上昇する。

 結果、実験環境で栽培された小麦は、含有する亜鉛、鉄分、タンパク質の濃度が通常の環境で栽培された小麦よりもそれぞれ9.3%、5.1%、6.3%少なかった。コメでは、亜鉛、鉄分、タンパク質の濃度がそれぞれ3.3%、5.2%、7.8%減少した。ただし、栄養成分の減少幅は品種によって大きく異なった。

 エンドウマメやダイズでも亜鉛や鉄分の減少が確認されたが、タンパク質の濃度はほとんど変化がみられなかった。一方、トウモロコシとソルガムでは、CO2濃度の上昇の影響は比較的小さかった。

 論文は、貧困国に支援がなければ、貧困国の栄養状況はいっそう悪化する恐れがあると警告した。亜鉛または鉄分が不足している人は世界中に20億人ほどいる。亜鉛が不足すると免疫系に影響を及ぼし、鉄分不足は貧血の原因となる。(c)AFP