具身型AIロボット、本格的に社会実装へ
このニュースをシェア
【12月15日 東方新報】工場やスポーツ会場、家庭など、さまざまな場面で「よく見て、よく聞き、器用に動く」具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)ロボットが登場し、人びとの生活や働き方を変えつつある。2025年、具身型AIは国家の「第15次五か年計画(十五五)」計画に盛り込まれ、新質生産力を支える重要分野として位置づけられた。AI・ロボット・多モーダル感知を融合したこの新産業は、技術突破の段階から、社会実装と規模化の段階へ移っている。
技術革新の中心にあるのが、大規模モデルがもたらす「ロボットの大脳化」だ。大モデルと視覚・聴覚・触覚などの感知技術の融合により、ロボットは環境を認識し、自律的に判断できるようになりつつある。なかでも、米ロボティクス企業「Figure」のロボットが短期間の訓練で未知の物体を扱えたり、テスラ(Tesla)のオプティマス(Optimus)が精密作業やミス修正を自律的に行えるようになったことは、その象徴的な例だ。また、分散計算やモデル圧縮技術が進展し、限られた計算資源でも高性能を実現できる環境が整いつつある。
ただし、量産化・実装には産業チェーン全体の協調が欠かせない。上流では半導体や高精度センサーなど主要部品の国産化がなお課題となっている。中流ではハード・ソフトの規格不一致が開発コストを押し上げており、ソフト分野では海外の大規模モデルが先行する一方、国内は独自OSやアルゴリズム開発を進めている。下流の応用現場ではニーズが多様化しており、各段階の協同アップグレードが求められている。
ロボットの大規模導入が最も進んでいるのは工場だ。自動車工場などでは、搬送、トルク締め、精密検査など、標準化された作業がロボットに適しており、2025年には世界で数千台規模の人型ロボットが工場現場に導入される見通しだ。医療や介護などサービス分野でも活用が広がり、手術ロボットや外骨格アシスト装置が実用段階に入っている。11月の深セン市(Shenzhen)での国体聖火リレーでは、人型ロボット「夸父(Kuafu)」が伴走者なしで炬火トーチを運び、話題を集めた。
急速な市場拡大を背景に、世界の企業が競争を加速している。テスラは2025年に1万台のオプティマスを生産予定で、国内の智元ロボットや四足ロボットの宇樹科技(Unitree Robotics)も存在感を高めている。大企業は資金と研究開発の優位性でエコシステムを形成し、スタートアップは特定分野で革新を図るなど、多様な競争環境が生まれている。
重要なのは人材と政策だ。国内のAI人材不足は約500万にのぼり、具身型AI分野では不足がさらに顕著だ。上海市では40万人の需要に対して在校生は4万人にすぎない。これに対応し、大学のAI課程拡充や企業との共同研究が進められている。政策面でも、中央と地方が大型ファンドや研究支援を打ち出し、工業・医療・介護などの分野で実証と応用のための環境が整備されている。
技術、産業チェーン、人材、政策が同時に加速し、具身型AIロボットは「試作の段階」から「量産し使われる段階」へと大きく踏み出している。(c)東方新報/AFPBB News