四川の若手農家、技術で「軽やかな農業」を実現
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【12月3日 東方新報】中国・四川省(Sichuan)邛崃市(Qionglai)の田んぼでは、ドローンが肥料を散布し、29歳の黄鑫(Huang Xin)さんがスマートフォンで作業状況を確認する姿が見られる。今でこそ地域では珍しくない光景だが、数年前までは農家が想像もしなかった「未来の農業」だった。
黄鑫さんは「95後」世代のUターン起業家だ。大学在学中の2016年に家庭農場を立ち上げ、2018年の卒業後に本格的に地元へ戻った。しかし、実際の農業は教科書のようにはいかず、最初は土地もなく、借地からのスタート。小麦栽培では病害虫被害に悩むなど、試行錯誤の連続だった。
それでも黄鑫さんは、農機やドローンの技術を徹底的に学ぶことで突破口を見出した。トラクターや田植え機を一つずつ習得し、まだ普及していなかった農業用ドローンを友人と購入。自分の農地の作業効率が上がったことで、地域の農家の意識も変化し、ドローン導入が広がった。
現在、彼の農場は1300ムー(約87ヘクタール)を超える。北斗衛星対応の無人田植え機が自動で作業し、ドローンは農薬・肥料の散布を担う。衛星リモートセンシング技術により、スマホアプリで各区画の生育状況を確認し、施肥量の調整まで行える。かつて農家が炎天下や豪雨の中で田を巡回していた負担は大幅に軽減された。
地元政府の支援も大きい。40万元(約882万6800円)の農機購入で20万元(約441万3400円)の補助が受けられ、これまでに計40万元を支給された。また、無料の職業研修を通じて、農業初心者から上級農業マネージャーへと成長した。「基準を満たすための努力が、結果として農場の運営を整えることにつながった」と黄鑫さんは語る。彼の農場は現在、「栽培・収穫・販売・観光」を含む総合型モデルへ発展し、年商は800万元(約1億7653万円)を突破。常勤スタッフに加え、農繁期には100人以上を臨時雇用し、地域の雇用にも貢献している。
こうした「技術で農業を変える動き」は中国各地で広がっている。黄鑫さんのような若い世代が、長年農業を担ってきたベテラン農家と新しい農業技術の橋渡し役となり、地域の農業をアップデートする力になっている。「一人だけが豊かになっても意味がない。地域の人と一緒に豊かになることが本当の強さです」と黄鑫は話す。
そして未来の農業について、こう期待を語る。「いずれはロボットが田植えをし、ドローンが巡回し、ロボット犬が病気を探すようになるかもしれません。技術が農業をもっと楽にしてくれる。土地をしっかり耕すことは変わらず農業の基本です」。(c)東方新報/AFPBB News