【10月20日 東方新報】夜が明けきらないうちに、38歳の金洙(キム・ス)さんは竹かごを背負い、長白山(Changbai Mountain)のふもとに広がる松林へ入っていった。朝露でズボンの裾が濡れ、空気には土と松の香りが漂う。金さんは手慣れた様子で落ち葉をかき分け、肉厚のマツタケをいくつか掘り出した。これらの野生マツタケは、わずか二日後には飛行機で日本・東京や韓国・ソウルの食卓に並ぶという。

金さんの家は吉林省(Jilin)延辺朝鮮族自治州(Yanbian Korean Autonomous Prefecture)・図們市の涼水鎮亭岩村にある。マツタケの収穫期はそろそろ終わりを迎え、地元の人びとは代々受け継がれてきた「大きいものを採り、小さいものを残す」習慣を守って山に入る。涼水鎮の今年のマツタケの総収穫量は約1.5トンと見込まれ、村民1人あたり1〜2万元(約21万3643〜42万7286円)の増収が期待されている。「今年は雨が少なく暑かったので収穫量は減ったけれど、その分、値段は上がった」と金さんは話す。

延辺朝鮮族自治州は吉林省の東部に位置し、日本や韓国からの距離が近い。1980年代には両国で野生マツタケの需要が急増し、延辺産のマツタケは高品質と輸送の利便性を強みに、いち早く国際市場に進出した。

マツタケを「新鮮なまま」海外へ届けられるのは、延吉税関の迅速な通関体制によるものだ。極めて短い鮮度保持期間に対応するため、地元では「生鮮・易腐品(腐敗しやすい生鮮品)のグリーン通関ルート」を設け、24時間体制での検査予約と即時放行を実施している。輸出企業は、収穫から数時間以内に申告手続きを終え、第三国の空港での中継を経て、48時間以内に海外市場へ届けることができる。

延辺朝鮮族自治州の延吉市(Yanji)の「マツタケ街」では、数百軒の店舗が並び、店内には保冷箱が山積みされていた。商人たちはラベル貼りや梱包、積み込み作業に追われ、街全体が活気づいている。「時間が品質を決めるんです」と話すのは、延辺天松マツタケ店の代表・朴君(パク・ジュン)さん。今年は日本と韓国に約5トンのマツタケを輸出したという。

朴さんによると、今年はマツタケの価格が約1割上昇し、最上級品は1キロあたり1500元(約3万2046円)近くに達したが、それでも海外市場では依然として供給が追いつかない状況だという。

税関の統計によると、今年1〜9月の延吉港の松茸輸出は256トン、輸出額は5660万元(約12億921万円)に上った。通関のスピードアップとブランド力の向上により、延辺朝鮮族自治州産のマツタケは「新鮮・迅速・安定」という強みを武器に、国際的な高級食用きのこ市場での存在感をさらに拡大している。(c)東方新報/AFPBB News