【10月16日 CNS】出力1テラワット(1000ギガワット)のデータセンターは、1年間でどれほどの電力を消費するのだろうか。その答えは、中規模都市1年分の総電力量に匹敵する。では、もし世界中のAI大規模モデルが同時にフル稼働したら、電力は足りるのだろうか。オープンAI(OpenAI)、エヌビディア(Nvidia)、グーグル(Google)などの巨大テック企業が相次いで「数千億円規模」のデータセンター建設競争に参入し、AIの戦いはもはや技術開発を超えて、電力をめぐる争いへと広がっている。

2025年の世界人工知能大会(WAIC)では、中国国家電力網公司が「AI+次世代電力システム」を披露した。アメリカ・バージニア州に住む57歳のケビン・スタンリー氏は「電気代の請求がずっと上がり続けている」と話す。彼の自宅は州内のデータセンター群から車で1時間ほどの距離にあり、過去3年間で電気料金は約80%も増加したという。AIブームが高まるなか、モデルの訓練から推論計算まで、あらゆる「算力(コンピューティングパワー)」の進化の背後には、電力システムの限界への挑戦がある。

ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)の予測によると、2035年には世界のデータセンターの電力消費量が世界全体の使用電力量の4%を超えると見込まれている。もしデータセンター群を一つの「仮想国家」と見なすなら、その電力消費量は中国、アメリカ、インドに次ぐ世界第4位となる計算だ。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の分析報告も「今後のAI発展の最大のボトルネックは、半導体ではなく『電力』にある」と指摘している。テクノロジー競争の舞台裏では、見えないエネルギー争奪戦がすでに始まっている。

その中で、中国は強固な電力システムと国家戦略によって優位に立ちつつある。2024年、中国の総発電量は10兆キロワット時を突破し、世界全体の約3分の1を占めた。その膨大な電力供給を支えているのは、継続的に整備されてきたエネルギーインフラだ。「西電東送(西部から東部へ電力供給)」「西気東輸(西部の天然ガスを東部へ)」「北煤南運(北の石炭を南へ)」など、国家レベルのエネルギー大動脈が供給網の最適化を進めてきた。とりわけ、中国は超高圧送電(UHV)技術の整備を加速させ、世界でも類を見ない電力インフラ体系を形成。AI時代の算力拡大を下支えしている。

また、中国はAI開発に伴う高密度な電力需要に対応するため、供給能力の拡大にとどまらず、エネルギー・データ・算力の一体化管理を全国規模で進めている。その中核となるのが「東数西算(東のデータ、西で計算)」プロジェクトだ。東部地域ではデータ需要が急増する一方で、土地や電力資源が限られている。対して西部地域は再生可能エネルギーに恵まれ、大規模なデータ処理能力を備える潜在力を持つ。この構想では、東部で発生する膨大なデータを西部へ送って計算・処理を行い、算力と電力を効率的に結びつけることで、国家全体の資源利用を最適化する。現在、この「東数西算」プロジェクトはすでに全国の知能計算能力の約8割を提供するまでに拡大している。

AIの発展を支える一方で、中国はグリーンで持続可能な成長にも焦点を当てている。AIは膨大な電力を消費するだけでなく、二酸化炭素排出量の増加要因にもなる。清華大学(Tsinghua University)エネルギーインターネット革新研究院の副院長・高峰(Gao Feng)氏は「算力の『グリーン化』を進めるには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーをより多く活用する必要がある」と指摘する。また、高峰氏は「AI計算センターの電力需要の変動と、再生可能エネルギーの供給変動を両立させるには、『計算と電力の協調』によって新しい電力システムの供給と需要のバランスをとることが重要だ」と述べている。

さらに中国は、「人工知能+エネルギー」分野における段階的な発展目標を設定し、AI技術のエネルギー分野への応用を体系的に推進している。AIが電力系統の『頭脳』として機能すれば、発電や送電の安全管理、電力需要の予測、再生エネルギー計画の最適化、さらにはカーボン削減など、エネルギー運用の効率化が期待される。こうした取り組みにより、「AIがエネルギーを支え、エネルギーがAIを支える」という双方向の循環モデルが徐々に形成されつつある。

AIによる電力消費の課題は、決して解決不能ではない。堅固な電力基盤、計画的な国家戦略、そして先進的な技術融合を背景に、中国はグリーンで安全かつ効率的なAI発展モデルを模索している。それは単に算力需要への対応にとどまらず、エネルギーとAIの協働によって未来のデジタル世界を動かす取り組みでもある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News