【故宮百年】故宮の新たな命――紫禁城から博物院への転換と対話
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【10月14日 CNS】北京市の中軸線の中心に位置する故宮博物院(The Palace Museum)は10日、創立100周年を迎えた。明清両代の興亡を見届けた故宮(紫禁城、Forbidden City)は、この百年間で皇帝のための宮殿から国民が共有する文化の宝庫へと姿を変え、今も世界との文化交流を続けている。
今年は紫禁城の完成から605年の節目でもある。現在、午門城楼では「百年の守護――紫禁城から故宮博物院へ」と題した特別展が開かれ、館の至宝である「清明上河図」が10年ぶりに公開されたほか、「伯遠帖」「五牛図」といった名品も並んでいる。9月30日の開幕以来、連日多くの来場者が列を作って入場している。
故宮博物院は、明清時代の皇宮(通称・紫禁城)とその旧蔵品をもとに1925年に設立された。総面積は106.09ヘクタールにおよび、世界最大かつ最も保存状態の良い木造建築群として知られている。また、中国古代の文化や芸術作品の宝庫でもあり、所蔵品は186万点を超える。主な収蔵品は明清時代の宮廷ゆかりの品々や古建築、書籍類で、陶磁器、青銅器、絵画、時計、楽器など25の分野にわたる。そのうち約8000点が最上級の国宝級に分類されている。
1925年、最後の皇帝が紫禁城を去ってから1年後、故宮博物院が誕生した。かつて皇帝しか立ち入れなかった場所が、初めて国民に開かれた文化の殿堂となった。統計によると、1949年から2019年までの70年間に延べ4億5600万人が故宮を訪れた。2024年だけでも来館者数は1760万人を超えている。
元院長の単霁翔(Dan Jixiang)氏は、「長い間、故宮は観光地という印象が強かった。多くの人は『故宮を見に行く』とは言っても、『博物館を見学する』とは思っていなかった」と語っている。この意識を変えるため、故宮は大規模な環境整備と収蔵品の整理を行い、公開区域を拡大した。
現在では、全体の約8割が一般公開されており、かつて「立入禁止」と書かれていた場所も次々と開放されている。午門、武英殿、文華殿、斎宮などでは多彩な展覧会が常時開催され、多いときには40の展示が同時に行われることもある。
年齢や国籍を問わず多くの来館者が訪れ、宮殿の回廊を歩けば、誰もが博物館としての息づかいを感じ取ることができる。年配の人びとは展示品から歴史の記憶をたどり、若者はSNSで故宮の猫の「警備員」や角楼カフェを紹介し、海外からの旅行者はミュージアムショップで「千里江山図」の世界観に触れている。こうした世代や国境を超えた文化の魅力こそが、故宮が百年を経てもなお新鮮さを保ち続ける理由だ。
故宮の価値は、所蔵品の多さだけではない。今では静かに展示するだけの宝庫から、文明が交流する「生きた舞台」へと進化している。近年、故宮博物院は海外との連携をさらに深めており、これまでに香港、マカオ、台湾などで40回以上の展覧会を開催したほか、アジア、ヨーロッパ、米国など世界各地から18の展覧会を招いている。
新たな百年の出発点に立つ今も、故宮は成長を続けている。現在建設が進む「故宮北院区」がまもなく公開される予定だ。北京西部の五環路の外に位置する北院区は、敷地面積10万平方メートルを超え、主要な建物もすでに完成に近づいている。将来的には、一部の展示品がここに移され、故宮の新たな物語を紡ぐ「もう一つの故宮」としての役割を担うことになるだろう。(c)CNS/JCM/AFPBB News