【10月8日 東方新報】中国・浙江省(Zhejiang)で婚礼車レンタルを営む徐(Xu)氏は、9月に入ってから多忙を極めている。「国慶節と中秋節が重なる連休中の注文は、今年9か月分の合計をすでに超えました」。この時期は徹夜が続くほどの需要だという。

一方、江西省では小米科技(シャオミ、Xiaomi)の電気自動車「SU7」のオーナー有志が結成した非公式の小米自動車オーナーズクラブがさらに慌ただしい。代表を務める阿浩(A Hao)氏によれば、国慶節期間の婚礼車予約は120件を超え、すでに受付を終了した。「最も早い予約は4月に入っていました」と語る。

◾️シャオミ車で婚礼行列

阿浩氏はSU7を購入後、仲間と楽しむためにクラブを作った。それが口コミで広がり、今では2000人以上が参加する大規模なコミュニティに成長した。メンバーの大半は2000年代生まれで、オンラインで車の話をするだけでなく、実際に集まってイベントに参加することも多い。

転機は昨年8月。メンバーの一人が結婚式でBBA(メルセデス・ベンツ<Mercedes-Benz>、BMW、アウディ<Audi>)ではなくシャオミ車の行列を提案し、阿浩氏が車両を集めた。華やかで斬新な演出が評判を呼び、それ以来依頼が相次ぐようになった。クラブでは受注後にオーナーを募り、当日はリーダーを立てて隊列を取りまとめるという仕組みで運営している。

予約が急増したのは今年5月以降だ。「シャオミ車が結婚式に使える」との認知が広がり、利用するカップルは1995年以降生まれが中心だ。彼らは流行よりも「自分たちらしさ」を重視する傾向が強い。人気の理由はカラーバリエーションの豊富さ、スタイリッシュな外観、そしてBBAより安いレンタル価格だ。

阿浩氏「シャオミファンのカップルもいて、購入できなくても結婚式で夢を叶えたいと考えています」と話す。国慶節の期間中だけで40~50人のオーナーが毎日予約を希望し、連休で4000~5000元(約8万2931〜10万3664円)を稼ぐ人も少なくない。「半日で400元(約8293円)稼げるなら、会社員より割がいいので皆積極的です」と笑う。

◾️EV需要の拡大と温度差

浙江省杭州市(Hangzhou)の徐(Xu)氏は、EV専任の車隊長を新たに募集することを決めた。「理想汽車(Li Auto)は去年は数件の注文でしたが、今年は5~6倍に増えました」と話す。

一方で慎重な声もある。北京市のクラブ責任者・高(Gao)氏は「ガソリン車が依然として主流。EVは価格を上げれば選ばれず、下げれば赤字」と指摘。重慶市(Chongqing)の業者・車(Che)氏も「30万元(約621万9870円)未満のEV婚礼車は扱わない」と語り、低価格帯では採算が合わないと説明する。

◾️若者の価値観の変化

杭州市で働く95後の蒋(Jiang)氏は、結婚式に小鵬汽車(Xpeng)のXpeng P7を選んだ。「結婚式は人目ではなく、自分たちが喜ぶためのもの。ロールスロイス(Rolls-Royce)やマイバッハ(Maybach)は特別感がなくなっている」と話す。ネットで参加者を募ると、多くのオーナーが快く協力し、報酬を求める人は誰もいなかったという。

南京市(Nanjing)で10月に結婚式を挙げた杜(Du)氏も、ロールスロイス+ベンツという従来の組み合わせを避け、華為技術(ファーウェイ、Huawei)の「問界(Aito)」などEVを選んだ。「旧来の豪華車は使い尽くされています。若い私たちは新しい豪華さを試したかった」。杜氏の先頭車・尊界S800は市場価格がロールスロイスを上回り、AITO M9はベンツSクラス並みだった。

「EV婚礼車は新時代に合った演出ができる。例えばM9のテールランプに浮かぶ『囍』の文字は、従来の車にはない表現です」と杜氏は語る。

◾️広がる市場

阿浩氏は今後、シャオミ婚礼車を高級プランと中級プランに分ける計画だ。国産EV人気はしばらく続くと見ており、その理由として「国産車への自信」「若者の結婚観の変化」「EVオーナーの増加」を挙げる。徐氏はSNS運営チームを立ち上げ、動画や画像で集客する方針だ。「注文の3分の1はSNS経由です」と語る。

一方、高氏は「市場で主流になってから参入を検討する」と冷静だ。

業界全体では、上海汽車集団(SAIC)や長安汽車(Changan Automobile)のトップが2030年までにEV普及率が70〜80%に達すると予測。全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計でも、8月のEV販売シェアは55.3%と過去最高を更新した。婚礼市場でも、国産EVが確実に存在感を強めている。(c)東方新報/AFPBB News