【10月1日 東方新報】中国製造業の「ハードの実力」は、「ソフトのサービス」によって新たな活力を得ている。

浙江省(Zhejiang)の万事利集団(WENSLI)は創立から50年にわたりシルク製品に専念してきた老舗企業だが、人工知能(AI)技術の導入で新たな道を切り開いている。2022年に着手したAI工場プロジェクトでは、柔軟な生産体制を活かし、スカーフや寝具、衣料などの全品目で個別注文に応じたカスタマイズを実現。杭州アジア大会の期間中には、200人以上のチャンピオンに専用スカーフを制作し、デザインから納品までわずか2時間で完了した。

このAI工場を基盤に、万事利は「スーパーファクトリー」モデルを打ち出し、中小シルク製品企業にAIデザインプラットフォームやGB-ART設備のレンタルサービスを提供している。2025年6月までに30社以上が導入し、業界全体のデザイン効率は40%向上したという。

また、家庭の液体石けん製造から始まった伝化集団(Transfar)は、現在では機能性化学品、新素材、農作物保護、シリコン系材料など幅広い分野を手掛ける多角化・多ブランド・グローバル展開の産業グループへと成長した。同社は杭州市(Hangzhou)蕭山区政府と共同で、バイオテクノロジー産業を中核とする「海外人材タウン・伝化科技城」を建設。海外の科学者や起業家に、戦略・資金・サービス・市場を含む一貫した専門運営支援を提供している。ここには現在、合成生物学や細胞・遺伝子治療を含む四大分野にまたがる150以上のバイオ企業が集積している。

伝化にとって、これは従来の化学や農業といった強みを持つ分野と新興分野の補完関係を生み出すだけでなく、科技城内の企業との技術協業が主業の高度化を促し、「エコシステムが産業を支える」好循環を実現している。

かつて中国製造の最大の強みは規模とコストだったが、今では「顧客を本当に惹きつけるのは単なる製品ではなく、絶えず改善されるサービス体験だ」と多くの企業が気づき始めている。

サービス型製造の台頭は、製造業が「製品を売る」から「解決策を売る」へ、「納品」から「伴走」へと移行することを意味する。この転換は顧客のニーズをより深く理解させ、産業チェーン全体を価値チェーンの上流へと押し上げる。

新エネルギー車の分野では、自動車メーカーは車を売るだけでなく、充電ネットワークの運営や自動運転機能のアップグレードといったサービスも提供している。国研新経済研究院の朱克力(Zhu Keli)院長は取材に対し「このモデルは企業に技術統合力の向上を迫り、バッテリー管理や車載ネットワークなどの中核技術の突破を促す。また、サービスによる持続的収入が研究開発に再投資され、技術革新の好循環を生む」と指摘した。

低空経済の分野では、ドローン企業が機器販売にとどまらず、農業用散布や物流配送といったサービスを展開している。産業用ドローン会社は飛行サービスプラットフォームを構築し、気象データや空域管理資源を統合して一括のソリューションを提供。これにより機器利用率を高めると同時に、新たな雇用形態を生み出している。

朱氏は「伝統的製造業が製品販売だけの利益に満足しなくなれば、サービスを組み合わせて収益を高めるのは必然だ。これは単なる製造とサービスの足し算ではなく、融合によって産業価値チェーンを再構築することだ」と述べた。企業にとっては新たな収益源の開拓や顧客の定着、安定的な利益確保につながり、産業全体にとっても価値の底上げにつながるという。

こうした流れを受け、中国工業・情報化部は昨年「サービス型製造標準体系建設ガイド」を発表し、技術基盤を強化する方針を示した。今年の政府活動報告でも、先進製造業と現代サービス業の融合発展試験を深化させ、サービス型製造の発展を加速させることが盛り込まれている。業界では「製造+サービス」が今後、中国の製造業の転換・高度化を推進する重要な方向になるとの見方が広がっている。(c)東方新報/AFPBB News