【9月30日 CNS】世界知的所有権機関(WIPO)が発表した2025年版「世界百強イノベーションクラスターランキング」で、中国は過去最多となる24の都市圏がランクインし、3年連続で国別首位となった。

注目されたのは、「深セン(Shenzhen)―香港―広州(Guangzhou)」クラスターが「東京―横浜」を抜き、初めて世界1位に立ったことだ。中国のイノベーションクラスターが世界ランキングで首位に立つのは史上初めてであり、同国の技術革新力が急速に向上していることを示す出来事となった。

◾️背景に国家的なイノベーション推進

中国は国家戦略としてイノベーションを重視してきた。2024年の研究開発(R&D)費は3兆6000億元(約75兆1705億円)を突破し、前年比8.3%増。投資総額は世界第2位で、対GDP比の投資強度(R&D投資比率)は2.68%と欧州連合(EU)の平均を上回った。

知的財産の保護環境も改善が続いており、2024年の知財保護に対する社会的満足度は82.36点と過去最高を更新。国内の有効な発明特許は延べ501万件に達し、うち企業が保有する特許は372.7万件に上った。イノベーションの主体として企業の存在感が一段と強まっている。

◾️大湾区の活発なエコシステム

「深港穗(深セン・香港・広州)」が首位を獲得した背景には、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)のダイナミックなイノベーション環境がある。2019年の「粤港澳大湾区発展計画綱要」発表以降、政策支援や越境協力、研究インフラ整備が進み、ハイテク企業と人材が集積した。現在、大湾区には7.6万社を超える国家級ハイテク企業が拠点を構え、中国で最も活力あるイノベーション地域の一つとなっている。

2024年には、深港穗3都市の発明特許授権件数が11.3万件で国内総数の12.1%を占めた。国際的な特許出願制度「PCT」に基づく国際特許申請は1.9万件で、国内総数の27.5%を占めた。2025年上半期だけで1万件を超え、前年同期比30.7%増と強い伸びを示している。

また、大湾区では省、市、区レベルにわたる母基金や投資ファンド群が形成され、研究成果の商業化や産業発展を資金面から強力に後押ししている。過去5年間のベンチャーキャピタル取引件数は人口100万人あたり135件に達し、世界首位獲得の土台を築いた。

◾️世界的な波及効果へ

今回上位入りした中国の24クラスターは、新質生産力の発展をリードし、イノベーションと産業の融合を推進する存在として位置づけられている。

今後は、深港穗を先頭に、中国のイノベーションクラスターが世界舞台で存在感を高めていく見通しだ。特許技術の共有や産業チェーン協力、人材交流、資本連動といった面でより開かれた姿勢を打ち出し、世界のイノベーション地図を塗り替える可能性がある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News