消費者苦情、ライブ配信と高齢者詐欺に集中
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【9月9日 東方新報】中国消費者協会は8月6日、「2025年上半期における全国消費者協会組織の苦情受理状況分析」を発表した。統計によると、上半期に全国で受け付けられた消費者からの苦情件数は99万5971件で、前年同期比で27.23%の増加となった。このうち50万9655件が解決され、消費者の経済的損失として約4億5200万元(約92億4990万円)が回復された。注目された苦情の多くは、高齢者を狙った詐欺的販売や私域マーケティング、感情消費、農産物のネット購入、玉石(翡翠・宝石)を扱うライブ配信、コンサート関連など、多岐にわたっている。
高齢者を標的とした消費詐欺の手口はますます巧妙化している。たとえば「歩いて稼げる」「無料でもらえる」といった宣伝文句で高齢者を誘導し、パスワード不要の自動決済によって会費を徴収する仕組みが広がっている。また、地方では「健康講座」や「無料配布」などを名目に人を集め、粗悪品や偽ブランド品を高額で販売する事例もある。ライブ配信では、工芸品を骨董品と偽ったり、健康食品を「万病に効く」と誇張して売り込むケースも報告されている。
たとえば2025年5月、ある高齢者が「講座に参加すれば米がもらえる」との勧誘電話を受け、セミナーに参加。会場では「この浄水器を使えば病気にならない」と説明され、3980元(約8万1448円)での購入を勧められた。しかし、同ブランドの浄水器は京東(JD.com)では300~400元(約6139~8185円)で販売されており、返品を申し出たところ、業者側はフィルターの設置費用を差し引くと主張した。
こうした実態を受け、消費者協会は高齢者向けの防犯教育を強化し、詐欺を見抜く力を養う必要があると訴える。また、ライブ配信での虚偽広告、自動課金、地方での販売集会などに対しては、監視体制の強化を呼びかけている。各プラットフォームには、販売者の資格審査、広告の内容確認、リスクの高い情報への表示制限といった対策が求められている。
私域マーケティング(公式サイトやECを通さず、チャットやSNSなどで直接販売する手法)に関連する苦情も増加している。たとえばショート動画で「成功事例」や「専門家のお墨付き」をうたい、第三者決済や銀行振込による購入を促すといった行為が見られる。しかし、こうした私域取引は証拠が残りにくく、返金交渉も難航しがちだ。偽造品や粗悪品が多く、購入後に販売者と連絡が取れなくなるケースも少なくない。
この新しい販売形態に対して、消費者協会は動画配信やSNSプラットフォームに対し、リスク警告の表示を義務づけるよう求めている。また、第三者決済サービスにも、リスクの高い取引に対してポップアップで警告を表示し、消費者が事前に確認・記録を残せるような対応を促している。
一方で、「感情消費」の分野にも新たな課題が浮上している。仮想的な感情サポートやストレス解消グッズなどが人気を集める一方で、商品の安全性や品質に問題があるケース、「投げ銭」など過剰な課金の誘導、返金への消極的対応といったトラブルが目立つ。消費者協会は、業界の参入基準やサービスの質、契約内容、個人情報保護などを明文化し、アフターサービス体制の整備を含めた法整備を求めている。プラットフォーム側には、課金上限の設定や、長時間利用への注意喚起などを導入し、消費者が安心して利用できる環境づくりを提案している。(c)東方新報/AFPBB News