この街には「量子大通り」と呼ばれる道路がある・中国
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【8月4日 People’s Daily】中国・安徽省(Anhui)の「合肥国家高新技術産業開発区」の雲飛路(Yunfei)は、一定間隔で「量子」という文字が目立つ案内板や標識、企業看板などが見られるので、人びとから「量子大道」という親しみやすい名前で呼ばれている。
この「量子大道」には30社を超える量子テクノロジーのリーディング企業が集中し、量子計算、通信、測定の3大分野を網羅した中国で最も密集した「量子産業エコシステム圏」を形成している。
「科大国盾量子技術」の展示ホールに入ると、まず目に入るのは量子技術の発展の歴史だ。大型画面には、量子暗号通信「京滬幹線」の運用状況がリアルタイムで映し出されている。
同社の首席科学者・彭承志(Peng Chengzhi)氏は「従来のデジタル暗号技術による情報伝送は、大規模な計算能力によって解読されるリスクがあったが、量子キー配送であれば、計算能力の向上にも対応でき、情報漏洩のリスクを効果的に低減できる」と説明する。
同社は2009年に設立された。後に合肥市が推進する「量子通信実験デモネットワーク」の建設プロジェクトを請け負った。同社の周雷(Zhou Lei)副総裁は「このプロジェクトを土台にして、わが社は世界で最初の量子通信ネットワークを構築し、その技術は実験室の分散型試作機から一定の産業機能を備えた試作機へと進化した」と述べている。
現在、同社が製造する「キー配送装置(QKD)」は急速に進化している。ホールには、人の身長ほどの冷蔵庫型量子キー配送試作機からビデオカメラほどの最新製品までが展示され、「量子暗号通信装置」の集積が高度化していることがよく分かる。
周氏の説明によると「量子キー配送システム」は今では多くの設備に直接搭載することが可能になり、設置コストが大幅に削減できたという。
その後、同社はそれまでの技術と応用の蓄積を基盤として、中国最大・最広範囲・最多応用事例を誇る量子暗号通信ネットワーク「合肥量子都市圏ネットワーク」と量子暗号通信「京沪幹線」の構築を主導した。さらに量子衛星「墨子号(Micius Satellite)」の打ち上げ成功により、暗号通信は都市圏・都市間から宇宙空間へと拡大された。
合肥市科学技術局の呂波(Lu Bo)副局長は「合肥は量子科学技術イノベーションの重要な発祥地で、全国の量子テクノロジー企業の3分の1近くがこの地に集まっている。現在、市全体で量子産業のサプライチェーンの上流から下流までの企業は70社を超え、全国で最も多い。産業の生態系(エコシステム)の観点で見ると、合肥は基礎研究から核心技術の開発、工程化、産業化までを網羅する完全な生態系が基本的に整っている」と紹介する。
量子計算の応用における重要な評価指標の一つは、従来のスーパーコンピュータと比べて、いかなる点で計算上の優位性を持つかを検証することにある。今年3月初め、中国の研究チームは105量子ビットの超伝導量子計算プロトタイプ「祖冲之三号(Zuchongzhi3)」の開発に成功し、超伝導方式における「量子超越性」(量子コンピュータが従来のスーパーコンピュータでは実行が困難な計算を圧倒的な速度でこなすこと)の記録を更新した。これにより、中国は超伝導量子計算と光量子計算という2つの主要な技術分野の両方で「量子超越性」の実証に成功したことになる。
「本源量子計算科技(合肥)(Orijin Quantum Computing Technology<Hefei>)」の実験室に足を踏み入れると「本源悟空(Origin Wugong)」と記された円筒形の大型装置が天井から吊り下げられている。これは同社が独自に開発した第3世代の超伝導量子コンピュータで、現在国内で最も先進的な、プログラム可能で納入実績もある超伝導型量子計算機の一つだ。
「本源悟空」の稼働により、合肥市は中国で初めて国産技術による超伝導量子コンピュータの製造サプライチェーンをほぼ構築したと言えよう。
現在までに、「本源悟空」は139の国と地域のユーザーから延べ2000万回以上アクセスされ、34万件を超える量子計算タスクを成功裏に完了し、流体力学、金融、バイオ医薬など多くの業種・分野をカバーしている。
今後さらに量子産業生態系の最適化を進めるため、合肥市はハイレベルの「産業交流プラットフォーム」の構築を積極的に推進し、「量子科学技術・産業大会」や「ハイクラス学術フォーラム」などを連続4回開催している。市は、全ての量子関連産業チェーンを巻き込み、上流から下流までのプロジェクトを統合し、イノベーションの要素と人的資源を結びつけ、量子科学技術企業の集積を推し進め、世界的な影響力を持つ「量子センター」の構築を目指している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews