黒金から緑の力へ 資源都市の転換
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【7月28日 CNS】中国・山西省(Shanxi)の高速道路を走ると、目の前に広がる光景に思わず目を奪われる。太陽の光を浴びて、光伏パネルが波のように続き、丘の上では風力タービンがゆっくりと風に回っている。ここが中国有数の石炭産地だとは想像もつかないほどだ。
「カーボンピーク・カーボンニュートラル」の目標のもと、中国のエネルギー分野ではグリーン転換が加速しており、多くの資源依存型都市が「緑の道」を歩み始めている。山西省・呂梁市(Lvliang)を代表とするエネルギー都市では、「黒い金」から「グリーンエネルギー」への深い変革が進行中であり、これは地方の発展路線の再構築にとどまらず、世界中の資源都市にとっても新たな参考例となっている。
■「黒金」から「緑金」へ: 価値観の転換
石炭は長らく工業文明の礎とされてきた。クリーンエネルギーの発展が進んでいる今も、国際エネルギー機関(IEA)によれば、2024年の世界の石炭消費量は87.7億トンに達し、3年連続で過去最高を更新する見込みだ。多くの発展途上国にとって、エネルギーの安定供給と低炭素化の両立は、なお大きな課題である。
例えばドイツは、石炭からの脱却を目指し、2038年までに全面的に石炭を廃止する計画を掲げ、風力や太陽光の導入を促進してきた。エネルギー危機によって一時的に石炭火力が増加したものの、2023年には風力発電が石炭を上回り、最大の電力源となった。このように、クリーンエネルギーへの構造的転換は時間を要するが、着実に道筋は見えている。
中国に目を向けると、伝統的なエネルギー大省・山西でも同様の動きがある。「全国の半分の明かりを灯した」といわれたこの省は、いまや単なる「石炭の地」ではなく、統合と高度化を通じた新たな成長を模索している。
良質な原料炭と焦炭生産の一大拠点である呂梁市では、「石炭一辺倒」からの脱却を進めており、焦炉の閉鎖と並行して、石炭由来の新たな化学製品への展開が始まっている。たとえば焦炉ガスから抽出された水素は、水素エネルギー産業の構築に活かされている。変革は理念にとどまらず、すでに現実のものとなりつつある
清華大学(Tsinghua University)エネルギー転換研究センターの何継江(He Jijiang)常務副主任は、「呂梁が石炭の産地だと知らされなければ、街の風景や空気の質からは想像もできない」と語り、同市の取り組みを高く評価している。
■「石炭の海」から「クラウドの海」へ: デジタルが切り拓く未来
エネルギー分野におけるデジタル化は世界的潮流となっており、デジタル技術との融合はエネルギー効率の飛躍的な向上を可能にする。
呂梁市の鑫岩炭鉱の制御センターでは、巨大なディスプレイに坑内の様子がリアルタイムで映し出され、作業員がボタン一つで各種機械を操作できるようになっている。これは5G通信技術の導入によって実現されたもので、地下でも遅延のない通信と映像伝送が可能だという。
同鉱山では5G基地局を地下に55基、地上に4基設置し、完全な通信網を構築。現在は掘削ロボットや無人運搬車両など11のスマートシステムと連携し、さらなる効率化を図っている。
また、炭鉱開発にともなって大量に発生するがれき(炭鉱副産物)である「石炭矸石」の再利用も課題である。年間で8億トンに及ぶ排出量に対し、リサイクル率は低く、有効利用が急務となっている。
鑫岩炭鉱では、年間100万トンのがれきを鉱山内で埋め戻す「充填一体化プロジェクト」を推進しており、ごみを宝に変える新産業として注目されている。
■焦炭から水素へ: 新たな成長エンジンの創出
呂梁市孝義市(Xiaoyi)では、水素を燃料とする大型トラックが出発の準備を整え、天津港を目指して走り出す。これらの車両は1回の走行で84キロのCO2を削減でき、運輸業界における脱炭素化の象徴となっている。
1.6億トンの石炭埋蔵量、3800万トンの焦化生産能力、35億立方メートルの非常規天然ガス資源を背景に、水素製造の大規模展開が始まっている。
地元に進出した企業は膜電極触媒の国産開発に成功し、2025年には数百台の水素トラックを納品予定だという。上下流企業との連携も進み、呂梁は中国有数の水素産業クラスターを目指している。
「石炭―焦炭―化学―電力―水素」という産業エコシステムの中で、2030年までに年産50万トンの水素供給能力を構築し、関連産業の総生産額を1000億元(約2兆446億円)にまで引き上げる計画だ。
清華大学エネルギーインターネット研究院の高峰(Gao Feng)副院長は、「呂梁の変革は需要と具体的な応用シーンに根差しており、地域特性をうまく活かしている」と評価し、今後の産業集積にも期待を寄せている。
■全国的な広がり: 多様化する転換の道
呂梁の取り組みは孤立した例ではない。中国各地の資源型都市では、それぞれの特色を活かしながら多様な脱炭素路線が模索されている。
内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)のオルドス市(Ordos)では、風力・太陽光・水素・蓄電を一体化したシステムが構築されており、世界規模の水素産業拠点を形成中。陝西省(Shaanxi)楡林市(Yulin)では石炭由来のメタノールからオレフィンを生成するなど、先端的な石炭化学工業が育っている。
一方、黒竜江省(Heilongjiang)の鶴崗市(Hegang)や七台河市(Qitaihe)では、新興産業や医療・観光業へのシフトが進められ、資源依存型から多元的経済モデルへの移行が試みられている。
山西省では、こうしたグリーン技術の経験を海外にも展開しており、インドネシアやタイ、ジンバブエなどのパートナー国に中国式のエネルギー転換モデルを提示している。
石炭という「地に足のついた」資源の上に立ちつつ、中国の資源都市は今、グリーンでデジタル、持続可能な未来に向けて歩み始めている。脱炭素は、石炭そのものの否定ではなく、制度や技術、認識の革新を通じて、従来のエネルギーに新たな命を吹き込むプロセスなのだ。(c)CNS/JCM/AFPBB News