【7月14日 Peopleʼs Daily】高度なスマート運転システムを搭載した中国のEV車メーカー・比亜迪汽車(BYD)の乗用車が濃霧の中、道路を横断する羊の群れを認識、これを自動的に回避し、後続車に警告のハザードランプを点灯させた。

 先日開催された発表会の会場で、同社の王傳福(Wang Chuanfu)会長は貴州省(Guizhou)の山岳地帯での実測動画を披露し、今後2~3年で高度なスマート運転システムが、シートベルトやエアバッグと同様に「不可欠な装備」となるだろうと述べた。

 最近、長安汽車(Changan Automobile)、BYD、吉利汽車(Geely Automobile)など中国の自動車メーカーが相次いで自動運転の普及戦略を発表している。

 長安汽車のインテリジェント化戦略「北斗天枢2.0計画」では、今後3年間で35車種のデジタルスマートカーを発売するとしている。

 吉利は「千里浩瀚」自動運転システムを発表し、吉利銀河(Geely Galaxy)ブランドの将来の新製品および吉利中国星(China Star)シリーズの車種に順次搭載すると宣言した。

 BYDは「天神之眼」高機能自動運転システムを全車種に搭載すると発表している。その中で小型EV車種・海鴎(BYD Seagull)の販売価格は6万9800元(約141万1356円)からと、手頃な価格帯になっている。

 中国の自動車メーカーのこのような動きは「スマート運転システム」が急速に我々の身近なものになりつつあることを表している。

 吉利汽車の淦家閲(Gan Jiayue)CEOは「自動運転の前提は安全であり、誰もが平等に安全を享受できることが、その基礎だ。吉利は『全方位統合感知』と『全走行シーンのリスク予測』によって、安全性という競争優位性を強固に築いている」と説明する。

 AIビッグモデルがスマートドライブにもたらすのは安全だけではない。中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ、Huawei)の自動運転支援システム「ADS 3.0」は、自社開発の「盤古ビッグモデル(汎用AI基盤モデル)」のシーン汎化能力(場面適応能力)を活用することで、複雑な交差点の通行成功率を85%から98%にまで向上させた。

 上海蔚来汽車(NIO)の自動運転支援システム「NOP+」は、センシングから制御までを一括で処理する「エンドツーエンド大規模AIモデル」によって、家庭用ガレージでの自動駐車成功率を95%にまで向上させた。このシステムは、ユーザーの専用駐車スペースにある障害物の位置や配置を記憶することも可能だ。

 技術進歩の鍵は「エンドツーエンド型の大規模AIモデル」が自動運転システムの進化のあり方を根本から変えたことにある。従来の「感知し、判断し、実行する」というプロセスのモジュール型アーキテクチャでは、エンジニアが数万件にも及ぶルールを手作業で書き込む必要があった。これに対し「エンドツーエンドモデル」では、数千万キロに及ぶ実際の走行データをもとに、95%以上のシーンをカバーできる対応策を、AIが自動的に導き出すことが可能になった。

 業界関係者は、「エンドツーエンド型のAI大規模モデル」の技術的ブレークスルーと「国産AI大規模モデル」の台頭が、スマートドライビングの技術的経路とコスト構造を根本から再構築したと強調する。この「技術革命」は、高度なスマートドライビングの普及を促進するだけでなく、世界的な自動車産業の競争構造を根本から変革することになると高く評価している。

 スマートドライビングの普及を推進する鍵は、あらゆる手段を尽くしてソフトウェアとハードウェアに掛かるコストを削減することだ。

 スマートレーザー・レーダーシステムの先端企業「深セン速騰聚創科技(RoboSense Technology)」の工場では、12秒ごとに1台の「Mプラットフォーム中長距離レーザーレーダー」(レーザー光を照射して対象物までの距離や対象物の形などを計測する装置)が生産ラインから出荷されている。かつて業界で「超高価な杖(つえ)」と呼ばれていた自動運転用センサーである「レーザーレーダー」の単価は、2016年の8万米ドル(約1154万7200円)から現在の200米ドル(約2万8868円)まで劇的に低下した。

「深セン速騰聚創科技」の邱純潮(Qiu Chunchao)CEOは取材に応じ「可動部の無いソリッドステート設計とチップレベルでの統合(ワンチップ化)により、車載用レーザーレーダーの量産導入のハードルを大幅に引き下げることができた」と語った。現在すでに30車種を超えるスマートEVにこの装置が搭載されており、今年さらに14車種以上での量産採用が予定されているという。

 同様の技術的ブレークスルーが「高精度自動運転技術」のコスト構造を書き変えている。BYDは自社開発の「璇璣」自動運転チップにより、4Dミリ波レーダーのコストを業界平均の3分の1に削減した。

 また、長安汽車は自社開発のドメインコントローラーとAIチップの設計開発企業「黒芝麻智能」との共同開発チップにより、自動運転システムのハードウェアコストを3200元(約6万4704円)まで削減し、昨年比58%の大幅なコストダウンを実現している。

「中国電気自動車百人会」の張永偉(Zhang Yongwei)秘書長は「中国ではスマートドライブの『新しいコスト曲線』が形成されつつある」と指摘する。

 また、欧州最大のグローバル戦略コンサルティング企業「ローランド・ベルガー(Roland Berger)」のグローバルパートナー・時帥(Shi Shuai)氏は「中国のスマートドライブの競争力は、単発の技術的優位点に依存するのではなく、チップの自主開発、アルゴリズムのイテレーション(反復)、製造能力の3つの軸となる技術が結合し、全プロセスにわたるイノベーションの優位性が形成されていることだ」と分析する。

「2か月で新たなバージョンがリリースされる」、このペースが今の中国の自動車メーカーの「高精度自動運転技術」の成長のスピードだ。

 多くの中国の自動車メーカーが、年内に「L3(レベル3)」の条件付き自動運転機能を搭載した車種の発売を予定している。「L3」とは、米国自動車技術者協会の5段階分類の3番目のレベルで、高速道路など特定の場面ではシステムが運転を担い、ドライバーはハンドルから手を放すことも可能な先進技術である。

 ただし、業界の専門家は、L3レベルの自動運転が一般家庭に普及するためには、運転者と自動車メーカーの法的な責任分担を速やかに明確化しなければならないとも指摘している。

 工業・情報化部のデータによると、24年上半期、中国における「L2」クラス以上のスマートアシスト機能を搭載したニューモデルの浸透率は55.7%だった。張秘書長は、この数値が今年は65%まで上昇すると予測している。

 国産の「AIビッグモデル」が急成長する中、産業チェーンの連携による技術革新を強みに持つ中国の自動運転技術は、人工知能を積極的に取り入れながら、高度運転支援から完全自動運転へと進化の歩みを加速させている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews