【6月25日 Peopleʼs Daily】湖北省(Hubei)宜昌市(Yichang)の長江(揚子江、Yangtze River)西ダム水域で、スナメリが水面から跳び上がる瞬間、これを待ち構えていた「スナメリウォッチャー」の楊河(Yang He)さんは素早くシャッターを切った。

 2022年の秋、彼はここで数頭のスナメリが集団で捕食する姿の撮影に成功した。スナメリに追われた魚群が水面から跳び上がる様子は、非常にダイナミックな光景だったという。

 その写真の場所は今、世界初の長江スナメリ「追跡地図」の上で重要観測ポイントと記されている。週末になると、多くの親子が望遠鏡を構えて「追跡地図を頼りにスナメリを探す」光景が見られる。

 丸い頭、太った体、全身が鉛灰色または灰白色の長江スナメリは、その愛くるしい外見から長江の「微笑み天使」と呼ばれている。これは中国最大の河川・長江固有の古生種であり、国家一級重点保護野生動物だ。

 しかし、生息地の喪失、漁の際の誤捕獲、水質汚染、気候変動などが原因で、スナメリの個体数が急激に減少し、13年には「絶滅危惧種」に指定された。

 近年、長江沿いの省や市は、長江の生態系回復を重要課題とし「生態系の大規模な保護を共同で進め、大規模開発は行わない」という方針を掲げ、長江経済帯における生態系保護に「転機となる大きな変化」が起きている。長江の魚類資源が増加し、水生生物の種類が増え、スナメリの個体群の状況も次第に改善されている。

 24年10月、湖北省(Hubei)科学技術庁と中国科学院水生生物研究所が共同主催した「国際小型鯨類保護シンポジウム」で、スナメリの「追跡地図」が正式に公表された。

 この地図の作成を担当した「スナメリ追跡計画」プロジェクトチームは23年、長江沿いのスナメリの分布地で1年近くの調査研究を実施した。

 チームは「長江中下流のスナメリ生息地の水質環境は全体的に良好である」と言い、「洞庭湖(Dongting Lake)の湖口付近の水域では十数頭のスナメリが次々と水面から跳ね上がる様子を目撃した」と付け加えた。

「連想研究院」武漢基地の研究開発責任者・呂向博(Lu Xiangbo)氏の説明によると、プロジェクトチームは1年間で大量のデータを収集し、研究員が自社開発のAI技術を活用してスナメリの具体的な活動範囲を判定したという。

 中国科学院水生生物研究所の梅志剛(Mei Zhigang)副研究員は「研究者はスナメリの主要な生息区域でのソナーの設置など科学的な処置を施し、スナメリの保護活動に科学的な指導を行っている」と説明する。

 今は、楊河さんのカメラに映る景色は一変した。かつて油汚れが漂う化学工場の埠頭は岸辺の公園に変わり、違法な砂採取船は姿を消した。

「長江生態系の大規模保護」が進展する中、長江の岸辺で偶然スナメリを見かける光景は日常的になり、スナメリの個体数は着実に増加した。

 22年には1249頭に達し、17年比で23.42%増加した。歴史的な減少傾向が止まり、増加に転じた。湖北省の国家指定水質監視地点における24年の優良水質の割合は95.8%に達し、国家の水質判定の最低グレード・V類よりも低い「劣V類」に分類される重度汚染水質地点はすべて消滅した。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews