【6月19日 東方新報】海南島の最南端に立つと、まさに「天涯海角(天地の果て)」に限りなく近づき、悠久の時の流れがこの地では、まるで一瞬の幻に過ぎないような不思議な感覚にとらわれる。

 海の波が日常生活の現実感や重さを打ち砕き、延々数万メートルにおよぶ海岸線の潮の満ち干に引き寄せられ、人はおのずから軽やかな気分になれる。

 島の中央から遠く北方を望めば、五指山(Wuzhishan)の雨林の谷に、ひんやりとした風が静かに眠っている。その中を歩いていると、まるで自分が十万年前の雲になったかのような気持ちになる。雨上がりのそよ風が頬をなでると、ジュラ紀から生き続ける「桫欏(へご)」の木々と共に、身体がそっと揺れ始める。 

 海南は、人にそんな感覚をもたらす場所だ。海を欲するのではなく、自らが海になりたいと願う。山へ、谷へ、海へ、そして自由へと駆け出したい衝動が、止めどなく湧きおこる場所だ。

■愛は「天涯海角」までも

「天涯海角」、それは果てしない歴史の想像の世界の中で、「遥か遠く」よりも「なお遠い場所」とされてきた。

 そして「天涯海角」は海南島の南端にあるリゾート地の名称にもなっている。

 人びとはここで「愛を誓い合い、白髪の老いに至るまで想いを貫く」ことを願う。

 唐詩の一節「同じ天涯の落ち人(おちゅうど)が出会った縁(えにし)」に心を打たれ、やはり唐詩の「海に月が昇るこの時、遠く離れてあなたを想う」の気持ちに浸る。

 そしてまた唐詩の一節「心が通い合う友ならば、遠く天涯にいようとも、まるで隣にいるようだ」、そんな深いつながりに思いを馳せながら、「天涯海角」を静かに見つめている。

「何以中国・海南を歩く——海外華文メディアによるHainan Travelの発見」というイベントに参加したマレーシア「星洲日報(Sin Chew Daily)」の上級記者・温国鑫(Wen Guoxin)氏は、伝説の地「天涯海角」を今回初めて訪れた。

「『天涯海角』や『天涯共此時(天地の果てで共にこの時を過ごす)』といったフレーズはよく耳にしてきたが、実際にそんな地名があるとは知らなかった。景色もこれほど美しく、唐詩のフレーズの情景に本当にぴったりで、とても不思議な感覚を覚えた」、彼はこのように話している。

 日本のメディア「東方新報(Toho Shinpo)」の記者・陳穎(Chen Ying)氏は、海南島・三亜市(Sanya)に伝わるリー族(黎族)の伝説「鹿回頭」を初めて知り、深く心を打たれた。この物語は、猟師と美しい娘に姿を変えた女鹿との恋を描いたもので、「劉三姐」や「阿詩瑪」と並び、中国少数民族の三大恋愛伝説の一つに数えられている。三亜が「鹿城」と呼ばれるゆえんでもある。

「ここには、ロマンチックな恋物語がもたらす魂のような美しさがあり、山と海、そして街が調和した唯一無二の風景がある」、陳氏はそう語った。

 夜が訪れ、街に灯りがともるころ、「鹿回頭」の彫刻のそばに立つ百年の樹木の枝々に吊るされた灯篭が一つまた一つと灯っていく。「花好月円(満開の花と円い月)」「一鹿(一路)有你(ずっとあなたと共に)」といったフレーズが浮かび上がるこの光景の中にいると、誰しもがきっと「どこかの片隅で、まだ終わらぬ恋が静かに続いているのだ」と感じられることだろう。

■熱帯雨林、自己との出会い

 北緯18度の海南島の魅力は、恋のロマンだけではない。五指山の深い森では、風が緑の波のようにうねり、旅人を未知との出会いへと誘う。

 蘭の花が木々に寄り添い、ガジュマルは周りの木々を締めつけながら絡みつき、蝉の声が止むことはない。静けさの中に喧騒があり、密やかに、そして力強く、原始の生命が脈打っている。この山々は「時のかたち」であり、河や湖の始まりであり、そしてあらゆる命のすみかなのだ。

「方諾寨熱帯雨林景観区」では、古木や名木が立ち並び、雲気と山霧が漂い、清流や飛瀑が響き合い、歩みを進めるごとに一つの景色、一つの癒しがある。

 黎哥嶺(Ligeling)、母親嶺(Muqinling)、苗妹湖(Miaomeihu)、雨林茶谷(Yulinchagu)、桫欏谷、山泉稊田(棚田、Shanquan Titian)などの景観スポットが、雄大な山々の間に点在している。

 湖畔や棚田の周り、山頂の樹木の梢の先に建つ民宿からは、大きなガラス窓越しに湖と山が織りなす光景を余すことなく堪能できる。

 朝は風のささやきを、夜は雨音を聞きながら、心酔するようなひとときが味わえる場所だ。

 高い所が好きな人は、山の中腹数十メートルに建つツリーハウスから、曲がりくねった山道が俯瞰できる。もし肝が据わっているなら、空中に吊るされたハンモックに横たわり、天と地の間で、自分の心臓の鼓動だけを聴くという体験も悪くない。

 茶の木が連なり、山に寄り添い、水を抱くように広がる「方諾寨」は、典型的な熱帯雨林の景観と黎族の暮らす集落が調和する場所だ。農業、文化、観光を融合させ「農業に適した、観光に適した、健康に適した、学習に適した、仕事に適した」五つの魅力を併せ持つ、総合型の熱帯雨林景区となっている。

 明日を思う暇はなく、昨日はもう遠い彼方、今この瞬間が人生だ。

 深呼吸をしよう。自然とあなたが共に紡ぐ詩は「自由」そのものだ。(c)東方新報/AFPBB News