2025年世界AI技術大会、杭州で開催
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【6月10日 東方新報】「人工知能(AI)はかつてないスピードで世界の発展構造を再構築しており、この波の中で中国は目を見張るようなイノベーションの活力を示している」──6月7日から8日にかけて浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)開催された「2025年世界人工知能技術大会」に寄せたビデオメッセージで、ノーベル物理学賞受賞者のジョルジョ・パリージ(Giorgio Parisi)氏はこのように語った。
本大会は中国人工知能学会の主催で、「交差・融合・共生・共栄」をテーマに、国内外から約300名の専門家が最新の研究成果を発表し、政府・産業・学術・研究など各界から1000人近い関係者が参加。AI技術のブレイクスルーと産業のインテリジェント化における新たな潮流を議論した。
会議では、清華大学(Tsinghua University)情報科学技術学院の院長であり中国人工知能学会理事長でもある戴チョン海(Dai Qionghai)氏が、「現在、世界のAIエコシステムは技術の進展と産業再編が同時並行する重要な局面にある」と指摘。中国は比較的整備された技術体系とエコシステムを築いているとしながらも、今後は「ハイエンドチップ開発」「基盤アーキテクチャの革新」「安全で制御可能な応用」などに重点を置き、弱点を補い、産業チェーンを強化していくべきだと述べた。
戴チョン海氏は「これまでのAI開発は仮想環境におけるデータとモデルの訓練に偏り、現実世界への適用には至っていなかった」と指摘した。その上で、現実と仮想が融合する「具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)」の発展こそがカギだとし、精密な知覚、環境再構築、人間とのインタラクション、実用応用に至るまで、完全な循環型システムの構築が必要だと強調した。
また、中国人工知能学会副理事長の何友(He You)氏は、無人知能システムの進化とその可能性について体系的に語り、AIの推進によって、今後の無人システムはマルチモーダル統合・自己学習・群知能・環境配慮型・人機共生といった方向へ進化すると展望。複雑な任務の遂行能力も徐々に備わり、同時に技術倫理や法規制の順守も重要になるとした。
パリジ氏は「人工知能は単なる技術革新にとどまらず、社会変革の推進力でもある」と述べた上で、特に深度求索(DeepSeek)による大規模言語モデルのオープンソース化を評価。「AI開発にはリスクもあるが、オープンで協調的な姿勢こそが最善の処方である。世界が連携すれば、より安定的で持続可能なAI発展が期待できる」と語った。
基調講演では、英サリー大学(University of Surrey)人間中心人工知能研究所の所長エイドリアン・ヒルトン(Adrian Hilton)氏、国際ユーラシア科学アカデミー(IEAS)会員で華為技術(ファーウェイ、Huawei)端末BGチーフサイエンティストの田奇(Tian Qi)氏が登壇し、浙江大学(Zhejiang University)の庄越挺(Zhuang Yueting)教授が司会を務めた。
会場では、さまざまな業界成果が披露された。杭州のイノベーション拠点の杭州未来科技城(Hangzhou Future Sci-Tech City)は業界向け大規模言語モデルの応用成果を発表し、AI特化型の知財証券化支援プログラムも始動。国家戦略技術機関であるタク溪実験室による第3回研究成果の転用プロジェクトも契約が成立した。
今回の大会は4つの基調講演と25の専門セッションで構成され、2025年世界AI技術革新コンテスト、AI技術展示の体験ブースなども同時開催された。
6年連続で本大会が開催されている杭州・余杭区は、AI産業と人材のエコシステムを強みに理想的な舞台を提供しており、大会の継続的な影響のもとで産業クラスターとイノベーション環境を強化。デジタル化の波を捉えて成長を続けている。
今後も本大会は、AI技術の革新と産業エコシステムの繁栄を力強く後押しし、「普遍的・安全・信頼できるインテリジェントな世界」構築のために、世界の英知と力を結集していくことが期待されている。(c)東方新報/AFPBB News