【3月12日 東方新報】「底なしの価格競争には反対する。品質を犠牲にした低価格では、消費者の使用体験が損なわれる」。全国人民代表大会(全人代)で、格力電器(Gree Electric)の董明珠(Dong Mingzhu)会長がそう語り、短期志向の商品開発に異議を唱えた。

 この発言は、多くの民間企業家の共通する思いでもある。好医生薬業集団(Good Doctor)の耿福能(Geng Funeng)董事長は「無秩序な競争は業界にも企業にも害を及ぼす。『内巻き(過度な内部競争)』のような消耗戦は過去のものにすべきだ」と述べた。極米光電(XGIMI Optoelectronic)の鐘波(Zhong Bo)董事長も、過剰な競争が粗利益を押し下げ、企業の経営を圧迫し、大きな赤字につながると懸念を示した。

 中国人民政治協商会議(政協)全国委員会委員である張萍(Zhang Ping)氏は、「企業が価格競争にばかり集中すると、イノベーションが停滞し、業界全体の利益が圧迫される。市場の競争秩序そのものが崩れるリスクがある」と分析する。

 政府もこうした問題に対して動きを見せている。今年の政府活動報告では「内巻き型競争の是正」が打ち出され、昨年の政治局会議や中央経済工作会議でもこの問題が重点的に取り上げられた。すでに一部の地方政府は、地域の政策文書にも是正方針を盛り込んでいる。

 ただし、競争そのものを否定しているわけではない。董明珠氏は「業界内での前向きな競争は、品質や技術向上を促進する」と語り、耿福能氏も「業界、企業、市場にとって建設的な競争が必要だ」と強調している。

 創業時に困難を経験したハルビン瀚霖科技開発の陳良勇(Chen Liangyong)董事長は、過剰競争や資金不足を乗り越え、技術革新によって国家認定の成長企業へと発展した事例を紹介した。

 また、政府の「設備更新」や「消費財買い替え」政策が消費を刺激し、業界に活力を与えているとの声もある。鐘波氏は「プロジェクター市場では販売が2割以上伸び、企業の成長に希望が持てた」と話し、「今後はより多くの製品が支援対象になれば、企業の研究開発もさらに進む」と期待を示した。

 政協委員で黒龍江省(Heilongjiang)工商連合会副主席の周春玲(Zhou Chunlin)氏は、市場参入条件の緩和や公平な競争環境の整備を求め、「民間企業は市場の変化に柔軟に対応できる強みがある。今後は基盤技術や先端技術分野での役割も高めるべきだ」と提言した。(c)東方新報/AFPBB News