【12⽉9⽇ Peopleʼs Daily】放牧民女性のタナさんは、中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)西部のバダインジャラン砂漠の奥にあるスミンジャラン湖畔で暮らしている。「代々ここで、自然と仲良く暮らしています」と説明してくれた。タナさんは今年40歳で、一時は故郷を離れて仕事をしたが、砂漠に戻ることを選んだ。今では夫と一緒に20頭以上のラクダを飼い、民宿の経営もしている。

 バダインジャラン砂漠はアルシャー高原にある中国で3番目に大きな砂漠だ。年間降水量は極めて少ないが、144の湖がある。湖は塩湖で、水に各種の鉱物が溶けているために鮮烈な赤色をしている場合もある。今年7月には「バダインジャラン砂漠-砂の塔と湖群」として世界遺産(World Heritage)リストに登録された。

 アルシャー世界地質公園では、巡回点検の作業が行われている。衛星画像に変化が生じた場所は重点的に調べ、問題があれば処理する。バダインジャラン砂漠を長年にわたり研究してきた陝西師範大学(Shaanxi Normal University)の董治宝(Dong Zhibao)副学長は、「砂漠は地球の生態系の一部であり、気候を調節し、生物多様性を保護する面で重要な役割を果たしています。砂漠に対する最良の保護は干渉せず、破壊せず、その生態系の本来の状態をできるだけ保つことです」と説明した。

 放牧民は太古から、生態環境のバランスが崩れれば、自らの生活が成立しないことを熟知していた。タナさんは「幼いころから家族に、湖を汚したり、野生動物を傷つけたりしてはならないと、注意されました」と説明した。

 今では放牧民も自然を保護する重要な力だ。アルシャー右旗(Alxa Right Banner)の林草および砂漠化防止局の張兆鑫(Zhang Zhaoxin)副局長は、「一部の放牧民には生態管理員になって日常的な巡回をしていただいています。放牧民全体に、ごみの清掃などに協力するようお願いしています」と述べた。

 タナさんは「世界遺産登録が成功したら、別の場所に引っ越しさせられるのか」と思ったことがある。そして、国際自然保護連合(IUCN)の専門家の禹卿植(Kyung Sik Woo)さんから「地元の放牧民は自然遺産の一部であり、保護の対象なので、従来の生活を続けることができます。ただし、過剰な生産はできません」との説明を受けて安心した。

 バダインジャラン砂漠に長く住んでいる放牧民は数十世帯あり、多くはラクダや羊の放牧で生計を立てている。地元政府は世界遺産登録作業の際に住民説明会を開催し、住民の訴えに耳を傾けた。

 毎年9~10月はバダインジャラン砂漠の観光シーズンだ。世界遺産登録が成功すると訪れる観光客はさらに多くなった。天津(Tianjin)から来た観光客の張宝娟(Zhang Baojuan)さんは、「ずいぶん遠かったですけど、このような壮麗な砂丘や湖を見ることができて、来たかいがありました」と話した。

 放牧民の一部は、ガイドをしたり民宿を開いたりして収入を増やしている。タナさんは「私たちは故郷の美しい景色を世界と共有したいです。そして、お客さんが私たちと同じように、この土地の生態環境を守ってくれることを願っています」と言った。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News