【4月19日 AFP】ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領(81)は17日、第2次世界大戦(World War II)中におじが搭乗した軍用機が「ニューギニア(New Guinea)島の人食い族がたくさんいる地域で撃墜された」と述べ、人食い族の犠牲になったことを示唆し、ひんしゅくを買った。

 だが、ホワイトハウス(White House)と国防総省の記録によれば、多くの家族に伝わるエピソードと同じように、事実は少し異なるようだ。

 バイデン氏は生まれ故郷のペンシルベニア州スクラントン(Scranton)への遊説で戦没者慰霊碑を訪れ、碑に刻まれたおじ、アンブローズ・J・フィネガン(Ambrose J. Finnegan)少尉の名前に手を伸ばした。フィネガン少尉は、バイデン氏が1歳だった1944年に死亡した。

 その後、同州ピッツバーグ(Pittsburgh)で鉄鋼労働者を前に演説した際、「おじはニューギニアで撃墜され、遺体は発見されなかった。ニューギニアのその地域には人食い族がたくさんいたからだ」と語った。

 さらに記者団にも同様に「おじはニューギニアで人食い族がたくさんいた地域で撃墜された」と述べ、搭乗機の残骸は米政府によって回収されたと語った。

 だが、フィネガン少尉が人食い族の犠牲になったことを示唆するバイデン氏の説明は、米国防総省の記録と異なる。

 同省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)には、フィネガン少尉の搭乗機は輸送任務でニューギニアへ向かう途中、「原因は不明」だが、同島沖で「不時着を余儀なくされた」と記録されている。

 DPAAのウェブサイトによると、同機は海に墜落し、乗員3人は沈む機体から脱出できなかった。1人だけが生き残り、通りかかった船に救助された。「翌日の空からの捜索では、不明機や他の乗員の痕跡は見つからなかった」とされる。

 ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール(Karine Jean-Pierre)報道官は、フィネガン少尉は「搭乗機がニューギニア付近で離陸後、太平洋上で墜落し、命を落とした」ことを確認した。

 ただし、慰霊碑を訪れフィネガン少尉をたたえることができたことはバイデン氏にとって「非常に感動的で重要」な出来事だったと擁護した。

 さらに、バイデン氏は11月の大統領選で対戦するドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が在任中、戦死した兵士らを「負け犬」「間抜け」と呼び軽んじたとされる点との違いを鮮明に打ち出し、退役軍人を支持する姿勢を示すため、「フィネガン少尉の話を強調した」と説明した。(c)AFP