ソウルの投票所で実施された出口調査(c)news1
ソウルの投票所で実施された出口調査(c)news1

【04月15日 KOREA WAVE】4月10日午後6時5分ごろ、韓国の地上波3社は今回の総選挙の出口調査の結果を発表した。その直後、「反与党陣営200席前後で圧勝」という速報が流れた。開票の結果、反与党陣営192議席の「圧勝」だったが、出口調査の結果と差があった。

何より激戦地を中心に出口調査の予測が外れた選挙区は18選挙区に達した。一例として、 「国民の力」のナ・ギョンウォン(羅卿瑗)候補が銅雀(トンジャク)乙(ウル)区の出口調査でリュ・サムヨン候補に4.7ポイントの差をつけられたが、開票の結果、8ポイント差で勝利した。

今回の出口調査には72億ウォン(約8億円)も投入されたというのに、なぜ当てられなかったのか?

その原因として「総選挙で過去最高の期日前投票率」が挙げられた。実際に期日前投票率が影響を与えたことは否定し難い。ただ、news1が確認した結果、「期日前投票」に限らず、他の要因もあった。

◇大統領選は正確、総選挙はなぜ外れた?

国民の知る権利のために実施される出口調査は「選挙モニタリング」の役割もしている。今回の総選挙では出口調査員は忙しく動いただろう。期日前投票率が過去最高(有権者全体の31.28%にあたる1384万9043人)を記録したため、本投票日の投票率も上がったからだ。

重要なのは、期日前投票者は出口調査の対象ではないということだ。また、期日前投票は本投票の日に選挙人を呼び込む「分散効果」を出すということ。期日前投票率が高くなるほど、出口調査に反映されないデータが増え、誤差が大きくならざるをえない。

放送局はこれを補正するために期日前投票直後に激戦地の選挙人5万人を対象に電話で調査したが、結果的に力不足だった。

ただ、期日前投票率だけをもって「主犯」と言うには多少不正確だ。

2022年の大統領選挙の期日前投票率は36.93%だった。今回の総選挙と比べてなんと5.65ポイントも高かった。それでも放送3社の出口調査はイ・ジェミョン(李在明)候補の得票率を小数点1位まで当てた。ユン・ソンニョル(尹錫悦)候補の得票率との差もわずか0.16ポイントだった。今回の総選挙と同様、電話調査で補正し、当選者も当てた。

◇構造的問題

その時は合っていて、今回はどうして外れたのか?

世論調査専門家はサンプルと母集団の面で総選挙出口調査が構造的問題を露呈させたとみる。

出口調査で選挙区の選挙人が母集団で、サンプル集団は出口調査に応じた人々だ。母集団が大きいほど調査の精度が高くなる。

例えば、大統領選の選挙人は韓国全体の有権者4400万人余り。ある投票所で突出したデータが出ても、大勢に影響は与えない。

一方、総選挙は全国254の選挙区で実施され、選挙区ごとに選挙人の数には12万~24万人程度の差がある。この場合、個々の投票所で突出したデータが影響を与える可能性があり、大統領選や市・道知事選より相対的に誤差が大きくならざるを得ない。

サンプルがどれだけ全体を代表しているかという点が、大統領選や市・道知事選よりも劣るという指摘がある。出口調査は5人に1人を調査するという抽出方式だ。回答を拒否する選挙人もいる。「5人に1人」が原則なので予測正確度の実績目標値を設定するのは難しい。

サンプルの代表性はその数に比例する。大統領選や市・道知事選の場合、選挙区が大きいだけに、いろいろなところからサンプルを取り出すことができる。しかし、総選挙は選挙区が小さいため、多くのサンプルを選べない。

大統領選や市・道知事選では出口調査が外れた事例を挙げることができる。一方、総選挙は今回18選挙区、2020年14選挙区、2016年には17選挙区で結果が逆転し、比較的低い的中率を示した。韓国リサーチのキム・チュンソク世論調査部門長は「総選挙は254カ所も選挙区があるため、すべての状況を物理的にコントロールすることは難しい。期日前投票も明らかに影響を及ぼしたが、総選挙での出口調査が持つ構造的限界がさらに大きな要因になった」と説明した。

◇出口調査「無回答」市民の民意を見逃してはならない理由

総選挙の出口調査の回答率は80%レベルと言われている。5人に1人は「無回答」で提出するという意味だ。しばしば、これらの「無回答」層の民意が一方に偏る場合がある。これを世論調査業界では「偏波が発生した」と説明する。業界関係者は「隠れた民意が一方に偏る場合があるため、予測が容易ではない」と話した。

今回の総選挙がまさにそうだった。出口調査が外れた選挙区18選挙区のうち16選挙区は「共に民主党」候補が当選すると予測されたが、実際は「国民の力」の候補が当選した。2016年の総選挙の時は14選挙区で出口調査結果が異なり、このうち11選挙区が「未来統合党」と予測されたものの、実際は「共に民主党」になった。

ヒントは「形勢」だ。「政権審判論」のように選挙戦を貫く大勢の世論がある場合、与党の支持者は与党に投票してもそう答えなかったり、「野党に投票した」と嘘をつくということだ。

明知(ミョンジ)大学政治外交学科のユン・ジョンビン教授は「保守層が自ら劣勢にあると判断し、意思を示すことができなかっただろう」としたうえで、「今回の選挙はいわゆる自らの政治的性向を明らかにしようとしない『隠れ保守』が出口調査で無回答のまま行ってしまったケースが多かったのではないかと思う」と分析した。

関心度の高い選挙区で結果が覆されたために注目を浴びたのであって、実際に総選挙の出口調査の的中率が絶対的に低いと見ることは難しい。放送局の立場からすると「やるだけやった」と思うかもしれない。

それにしても「構造的問題のために間違えるのは仕方がない」という説明を理解するのは難しい。「間違いが明らかなら調査はなぜするのか」という反論が当然出てくる。公共放送が出口調査にかける費用は、視聴者の受信料から出るものでもある。次の総選挙の時は、今回の出口調査で明らかになった問題を補完する画期的な方法を期待する。【news1 ソ・サンヒョク記者】

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