【4月11日 AFP】ウクライナ最高会議(議会)は10日、動員法の修正案から、前線での戦闘に長期間従事した兵士に除隊の機会を認める条項を削除し、世論の反発を呼んでいる。

 兵力でロシア軍に劣るウクライナ軍の指導部が、3年以上従軍した兵士に除隊の選択肢を与える修正案を撤回するよう圧力をかけていた。

 ウクライナ国防省のドミトロ・ラズトキン(Dmytro Lazutkin)報道官は10日、国営テレビで「(ロシア軍の)攻勢は前線全体で続いている。現時点で国防軍を弱体化させることは不可能だ」「今は性急な決断をすべきではない」と述べ、この条項に反対する軍部の立場を説明した。

 ウクライナ政府は動員政策について1年以上にわたって議論を続けており、議会は2月の第1読会で復員計画を盛り込んだ草案を可決した。

 だが、議会国防委員会メンバーのフェイスブックへの投稿によると、この条項は軍総司令官と国防相からの要請を受け、10日の第2読会に先立ち削除された。

 法案からは兵士への特別手当に関する条項も一部削除され、政府は代わりに「軍事要員のローテーションの仕組み」を見直す方針を示した。

 この方針転換は、長引く紛争で疲弊したウクライナ社会全体の反発を呼んだ。限界寸前の部隊の士気を低下させかねないものでもあった。

 南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)の防衛戦に参加した兵士で、活動家でもあるセルヒー・グネズディロウ氏は、この動きを「残酷な急転」と呼んだ。

 軍人で政治家でもあるユーリー・グディメンコ(Yuriy Gudymenko)氏は、改変された法案には「徴兵忌避者に対する罰則も、新たに動員された人々へのまっとうな手当もない」と批判。「無断離隊、医療委員会の買収、休暇から帰還しない兵士の増加」をもたらすだろうと指摘した。(c)AFP