【3月16日 AFP】マリ出身フランス人歌手のアヤ・ナカムラ(Aya Nakamura)さん(28)が、パリ五輪開会式でパフォーマンスを披露する可能性が報じられる中、ナカムラさんに対する人種差別の疑いで仏当局が15日、捜査に乗り出した。

 仏検察によるとこの捜査は、国内に拠点を置く「反人種差別・反ユダヤ差別国際連盟(LICRA)」からの申し立てを受けてのものとなっている。

 ナカムラさんは、ユーチューブだけで10億近くのストリーミング回数を記録している「ジャジャ(Djadja)」などのヒット曲を持つ世界的なポップ歌手。先月、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領と面会した際に、五輪開会式で20世紀のアイコン的存在であるエディット・ピアフ(Edith Piaf)さんの楽曲を歌う可能性について話し合ったと報じられると、ナカムラさんに対する人種差別の疑惑が取りざたされた。

 仏大統領選の候補者にもなった極右評論家のエリック・ゼムール(Eric Zemmour)氏が率いる政党が11日に開いた集会では、ナカムラさんの名前に観衆からブーイングが上がる騒動に発展。小規模な過激グループは、セーヌ(Seine)川に「アヤなんてあり得ない。ここはパリであり(マリの首都)バマコの市場ではない」との横断幕を掲げた。

 反差別団体のSOS Racismは、ナカムラさんに対する「差別扇動と人種差別的なネットいじめ」を理由に告訴状を提出したと発表。X(旧ツイッター)にはナカムラさんが「極右に引き起こされた、人種差別的憎悪の波の犠牲者」だと投稿した

 パリ五輪の大会組織委員会はAFPの取材で、「最近の人種差別的な攻撃に非常にショックを受けている」と述べ、アメリー・ウデアカステラ(Amelie Oudea-Castera)国民教育・スポーツ相もナカムラさんへの支持を表明している。(c)AFP