【12月26日 AFP】10月にイスラエルとイスラム組織ハマス(Hamas)の衝突が始まるまで、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)南部ラファ(Rafah)で商店を営むマフムードさんは、店頭でほこりをかぶっていたラジオが引っ張りだこになるとは思ってもみなかった。ガザではいまや、ラジオが外界を知るための貴重な情報源となっている。

 ガザではこれまでも停電は日常茶飯事だった。しかし、ガザを包囲したイスラエルは、電力と燃料の供給を断ち切った。

 いまやコンピューターやテレビを使ったり、携帯電話を充電し、インターネットを使ったりすることは、発電機やソーラーパネルがなければできない。だが、そうした高価な物を買えるガザ住民は少ない。

 だが電池式のラジオがあれば、最新の情報が手に入る。

 マフムードさんは「在庫はたくさんあったが、(ガザ衝突が起こった)最初の週にすべて売り切れた」と話した。電話もインターネットも使えない今、「ラジオが何が起きているか知る唯一の方法」だという。

 電力の消費量が少なく、電池が長持ちするのもラジオの長所だと付け加えた。

 衝突が始まるまで、ラジオは一つ約25シェケル(約1000円)だったが、今では約60シェケル(約2400円)で販売されている。

 ラジオが売り切れた後は、ラジオとライト機能が付いている古い携帯電話を買い求める人も増えた。

 マフムードさんは「携帯電話ももう売り切れそうだ」と話した。

■「昔に逆戻り」

 現在は人道支援物資でさえ入域を制限されており、追加でラジオを仕入れることもできない。

 同じくラジオを販売し、売り切れたというフセインさんは「皆、最新情報を求めている。どこが砲撃されているのかや親族の安否を知りたがっている」と話した。

 南部ハンユニス(Khan Yunis)の避難民キャンプに身を寄せているある女性はAFPに「ガザのどこのニュースでもいいから聞きたい」と訴えた。「電池が切れたら、キャンプを歩き回って、他の人のラジオに耳をそばだてている」

 BBCアラビックやアルジャジーラは、避難中のガザ住民向けに特別チャンネルを開設した。

 75歳のモハメドさんのようにヘブライ語を話せる一部の住民は、イスラエルのラジオ局もチェックしている。モハメドさんは、ラジオからイスラエル側の最新情報を入手し、自分の子どもや近所の人に伝えている。

 携帯電話でラジオ局のチャンネルを切り替えていた37歳の男性は「世界は近代的なテクノロジーで前進しているが、ガザは後退している」と話した。

「あいつらは私たちを石器時代に逆戻りさせたいんだ」

 映像は18日撮影。(c)AFP/Mai YAGHI