【12月26日 AFP】フランスの首都パリには大規模な「カタコンベ(地下墓地)」が存在し、そこにはフランス革命(French Revolution)期に命を落とした人々の遺骨で造られた壁がある。 

 かつてのパリ市民数百万人が永眠するこのカタコンベでは現在、崩れかけている骨の壁をいったん解体し、再度積み直す修復作業が行われている。

 カタコンベは、年間約60万人が訪れる観光名所となっている。元採石場を再利用しており、広大な地下空間には約200の骨の壁がある。

 仏革命期に最多の死者を出した事件の一つ、1792年の「九月虐殺」の犠牲者の壁には、約1000人の遺骨が納められている。

 壁職人のマルタン・ミュリオさんは、骨を積み直すのはモルタルを使わない他の壁の建造時と同様バランスが大事になるとして、「積み木遊びに少し似ている」と話した。

 修復作業はまず、専門家が骨を一つづつチェックし、壁の前面に使う状態の良い骨を選ぶところから始まる。「損傷がある物は隙間を埋めるために使われる」という。

 土木技師のナタナエル・サバルさんは、骨は「土の6分の1の重さ」しかなく、「骨と骨の間にも、骨の中にもたくさんの隙間がある」ため、壁を造るのは難しい作業だと話した。

 仏当局は18世紀後半、衛生上の懸念から、墓地に埋葬されていた遺骨を地下採石場に移し始めた。19世紀にパリの街が再開発された際にも、さらに多くの遺骨が運び込まれた。

 カタコンベを管理するイザベル・クナフさんによると、骨の壁の修復は今回初めて行われる試験的な取り組みだという。この幅2メートル、高さ1.8メートルの壁でうまくいけば、来年から再来年にかけて他の壁も組み直される予定だ。

 クナフさんは近くにある、ネットで覆われた壁を指さした。岩の天井の一部が崩れたため、壁の真ん中がせり出している。「骨自体は何百年も持つが、壁は経年や劣化、湿気で壊れることがある」と話した。

 カタコンベには簡単に行けるトイレがないため、作業は3時間ずつ休憩を挟まずに行われる。

 もう一人の技術者、エドゥアール・ゴミさんは「最初はびっくりした。こういう物には慣れていないから」と話した。「でも作業を始めてしまえば、骨を扱っているということは忘れる」

 壁職人のミュリオさんの普段の職場は、新鮮な空気を吸うことができる屋外だ。現在の作業については、「興味深い」仕事ではあるものの、「一生をこれに費やす気にはなれない」と認めた。「ここは自分が一番落ち着く場所とは言い難い」 (c)AFP/Pierrick Yvon