【1月5日 AFP】フィンランド南部アシッカラ(Asikkala)の森にある素朴な小屋で、エルッキ・ペッカリネン(Erkki Pekkarinen)さん(87)がシラカバの皮をナイフで丁寧に削っている。「10歳から始めました。77年間、シラカバの皮をいじってきたわけです」

 一般的に木材は頑丈な一方で、柔軟性に欠ける素材だと思われている。だが、シラカバの皮はそれに合った技術を使えば、「思いつく限り何でも」作ることができるとペッカリネンさんは言う。

 アトリエ兼ギャラリーには、接着剤やくぎを使わずにシラカバの皮だけで編み上げた無数のオブジェが飾られている。

 細部まで作り込んだジュエリーやハンドバッグから、アヒルの玩具、リュックサックまで、ペッカリネンさんはあらゆるものを製作してきた。サッカーボール大に編んだ球から、四方八方にトゲが伸びた新型コロナウイルスの模型もあった。

 中でも自信作は、帽子、ブリーフケース、靴までが一揃いになった「木のスーツ」だ。ペッカリネンさんが着ると、きしむ音がしたが、歩き回ると驚くほどしなやかだった。

 フィンランド東部の町リエクサ(Lieksa)で生まれたペッカリネンさんは少年時代、木こりとして働いていた。「伐採作業場でいろいろな物を作って過ごすのが好きだった。昔は自由な時間がたくさんあった」

 ある時、木を切っている間に、鳥が同僚の布製のリュックサックをつついて昼食を盗んでいった。だが頑丈な樹皮のリュックサックに入っていたペッカリネンさんの昼食は無事だった。

 石器時代、シラカバの皮は食料保存用の箱から子どものおもちゃまで、現代のプラスチックのような役割を果たしていたとされる。

 耐水性と断熱性に優れるため、北極圏の初期の住民は樹皮の靴を履き、樹皮のかばんを背負って雪の森を横断した。

 素材として高い価値が認められていた名残で、フィンランド語では「木の皮を集める」といえば「金銭を稼ぐ」ことを意味する。

 きれいに洗って乾燥させた樹皮を手にしたペッカリネンさんは「10年後も使えるでしょう」と言った。

 映像は2023年10月撮影。(c)AFP/Elias HUUHTANEN