【10月14日 AFP】米首都ワシントンの動物園の草むす囲いの中でフルーツ味のケーキを無心に食べているパンダのメイシャン(美香)にとっては知るよしもないことだが、自身や他のかわいいパンダたちが、中国で反米感情をあおる偽情報キャンペーンの駒として使われている。

 米国の動物園でパンダが虐待されている──。そんな根も葉もない話が、ここ数か月間、中国のSNSで飛び交っている。すでに米中間の緊張が高まる中、反米感情を一段と強めている形だ。

 そうした偽情報は、目立ちたがりのインフルエンサーによってあおられていると指摘する研究者もいる。このクマ科の動物を友好の印として贈与したり貸し出したりする中国伝統の「パンダ外交」に、影を落とす結果となっているのだ。

 中国系SNSの微博(ウェイボー)やティックトックの中国語版の抖音(ドウイン)では、メイシャンがワシントンのスミソニアン国立動物園(Smithsonian's National Zoo)で虐待を受け、痛みを伴う人工授精を何十回も施された、といった内容の動画の投稿が繰り返されている。

 それがきっかけとなり、メイシャンを救い出し、中国に戻すよう熱烈に訴える投稿が相次いだ。微博では、ハッシュタグ「メイシャンを救え」を付け救助を訴える投稿が大量に見られる。

 しかし、AFPのファクトチェック班によると、動画は実際には2015年にシンガポールで健康診断を受けている別の雄パンダを撮影し、当時同国メディアが大きく報じたものだった。

 微博への別の投稿では、雄のティエンティエン(添添)が健康診断の際に鎮静剤を投与され、拘束されたとする映像が出回っている。こちらについても、米シンクタンク「大西洋評議会(Atlantic Council)」のデジタル・フォレンジック・リサーチ・ラボ(DFRLab)によれば、2005年に中国・福建(Fujian)省で撮影された、検査を受けている別のパンダの映像だった。